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『し~~ちゃん、またボーっとしてるぅ~』
『え……違う違う』
しつこいようだが、ボーっとしているわけではない
小説の舞台設定を切り替える時には、ちょっとした感情の入れ込み具合を変えなければならず……それが大変で……
『しずか、また妄想~』
『だから、違うって……』
午後の校庭
マキ、あっちゃん、そして、私――
いつもの3人
グラウンドへ通じる階段
いつものポジションに
いつものようにジャージのままで腰掛けている
『しずか、昨日はどうしたの?急に帰っちゃって』
『あ、あれね……ちょっと用事思い出してね…』
『せっかくヒデ様の余韻に、し~ちゃんと浸りたかったのにね~』
『ごめんね』
『でも、しずか、昨日のヒデ君は、確かにカッコ良かったじゃない?』
『そうだね……』
『サッカーするヒデ様も素敵だけど、ギターを弾くヒデ様もいいよね~し~ちゃん』
『……そうだね』
何だ?
何故、私にばかり同意を求める?
二人揃って――
『しずか、やっぱり“人生はライブ”みたいなものなんだよ』
『ライブ?』
『バラードがあったり、ロックがあったり……盛りあがったり、浸ったり、色々あるってコトだよ』
『………マキさぁ~……小説書いてみたら……』
『ん?』
『絶対、当たるよ』
『小説家……ムリムリ…』
『私が言うんだから間違いないよ』
『………?何で、しずかが言うと間違いないの?』
『え?あ、それはね……え~と』
『あっ!ヒデ様!』
『え!?』
〈ドクドクドク〉
彼の姿が視界に入るだけで
勝手に私の鼓動は高鳴る
『……………』
伝えないと
届けないと
この気持ちを落ち着かせる術は無いの――?
『行っといで』
『え?』
隣のマキが私の肩を叩いた
『うん、そうだよ』
『……………』
あっちゃんも笑いかけながら顔をのぞかせる
『………………』
覚悟を決めないと
いけないのかな
『――――!』
🎵涙を誘う夕暮れの街🎵
階段をゆっくり下る
🎵夏の日の思い出を噛みしめる🎵
一段、一段を確かめるように
🎵夜空に浮かぶ水色の月🎵
次第に近くなっていく彼の姿
🎵あの男性の面影を映してる🎵
その姿がこれ以上なく愛おしくて
🎵やさしい瞳で私を抱いてくれた🎵
『!』
彼の視線が私の視線とぶつかる
🎵最後の言葉が胸に残る I'm callin'🎵
〈ドクドクドク〉
🎵ハートがせつなくて🎵
この鼓動を大切にしたい
🎵誰より愛していたのに🎵
優しく響く鼓動
🎵夢を見る頃はもう二度と帰らぬ I'm fallin'🎵
〈ドクドクドク〉
🎵悲しいこの気持ち🎵
切なく響くこともあるけど
🎵本当の恋に落ちたのに🎵
心地よくも響く
大好きな鼓動
🎵今頃あなたは誰かを愛してる🎵
この気持ちも……
🎵…I'm feelin'blue…🎵
ずっと忘れたくないよ
🎵心にしみる情熱の旅🎵
『あの……ヒデ……』
🎵日に焼けた恋人が戯れる🎵
『おぅ、しずか、昨日はありがとな』
『え?』
🎵二つの影が浜辺に落ちて🎵
『…………?』
『何で……先に言っちゃうの』
🎵口づけを交わしたら離れてく🎵
『?』
『私が先に言おうとしたんだけど………』
🎵このまま今私は雲に乗って🎵
『ヒデ……ありがとう……』
🎵あなたのところへ飛び出したい I'm callin'🎵
『あぁ……』
🎵心がちぎれちゃう🎵
『……………』
🎵あんなに信じていたのに🎵
『…………やっぱ、なんか久しぶりだな』
『……………』
🎵雨の降る音が夏の終わりを告げ I'm fallin'🎵
『しずかとこうして話すの、って……』
『……………』
🎵これ以上愛せない🎵
『昔はよく話したじゃん』
『………うん、そうだね』
🎵素敵な恋に落ちたのに🎵
『何か言いたいコトあったらどんどん言えよな』
『……………』
🎵この頃私はひとり泣き濡れてる🎵
“だったら言っちゃうよ”
🎵やさしい瞳で私を抱いてくれた🎵
『………………』
🎵最後の言葉が胸に残る I'm callin'🎵
『ヒデ………頑張ってね……』
🎵ハートがせつなくて🎵
『あ、おぅ……ありがとな』
『……………』
🎵誰より愛していたのに🎵
“いいんだ……これで”
🎵夢を見る頃はもう二度と帰らぬ I'm fallin'🎵
『じゃあね……』
『おぅ、じゃあな……』
🎵悲しいこの気持ち🎵
後悔なんてしてない
🎵熱い恋に落ちたのに🎵
私は私の気持ちに従って歩いてる
🎵今頃あなたは誰かを愛してる🎵
小説ならここでキメてしまうのだろうけど――
🎵誰かを口説いてる🎵
期待どおりの私じゃないけど――
🎵誰かを抱きしめる🎵
今はもっと大きくなりたいんだ
🎵…I'm feelin'blue…🎵
私がちゃんとした私の物語を作れる日が来るまでに
🎵…I'm waitin' for you…🎵
『ユミコ!』
『―――!』
『お前こそ頑張れよ!』
<<<<<<君はいったい誰なの?
『うん!』
私の名前は……
Yの日のドラマ
完
『ルミ、本当に俺でいいのか?』
『はい』
ルミはもう迷わなかった
たとえこの先、どんな困難が
待ち受けていようとも――
つづく
『……ふぅ~……』
今日もひとつの仕事が終わった……
ケータイを閉じ、椅子から立ち上がると
『う~~ん』
両腕を心のおもむくままに突き出しながら伸びをする
ちょっとした達成感に浸るこの束の間の時間が好きだ
『さてと~』
最後のBGMをかけてみる?
私からみんなに贈る最後のBGM――
長い時間、お付き合いいただいて
本当にありがとう
でも
夢はいつまでも終わらない
きっと叶う日がくる
願い続ける限り
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