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🎵大切な仲間に捧ぐ風のバラード🎵
『あっ!ケンさん!こんばんは』
🎵楽しい夢も苦悩の日々も🎵
返事をしながらベッドに埋めていた体をゆっくり起こす祐介
🎵声に出来ない世界🎵
『いいよ、いいよ、ゆっくり寝てれば』
🎵幸福と孤独は隣り合わせのストーリー🎵
恐縮しながら病室に入る健一
🎵他人と違う自分を避けて……🎵
『いいっす、結構今、ラクっすから』
🎵君は逃げて来たよね🎵
あの事故の日以来
彼への見舞いが日課になった
🎵よく見れば誰も仲間内に居場所はあるし🎵
事故によって生まれた
不思議な絆というのだろうか――
🎵気が付けば他人に「イヤ」と言えない自分がイヤだし🎵
健一には、彼をほうっておくことがどうしてもできなかったのだ
🎵人混みの中で自分だけが浮いても気まずいし🎵
『それで、調子はどう?』
ベッドの隣の丸椅子に腰掛けながら尋ねる
🎵愛される事ばかり🎵
『…………ケンさん……』
『ん?』
🎵期待するその前に🎵
『俺、やっぱ……一生歩けないんですかね』
『え………』
🎵忘れてないよね🎵
『リハビリしなくちゃいけないことは分かるんですけど……なんか……』
🎵君が自分であるのを🎵
『…………』
『どうしたらいいのか自分でも分からなくて』
『…………』
『俺………今まで何を目標にしてたんだっけって……不安になるんすよ』
『…………』
『自分の足で歩けるようになるかって事よりも、何か――目標が見えないっていうか』
🎵何気なく惚れたり🎵
『………………』
『何かとても大事な事を忘れてしまってるような気がして……』
🎵さり気なく泣いたり🎵
『…………』
『心の奥のどっかで……なんつ―か……よく分かんないんすけど』
🎵みんな同じ卵のように🎵
『このままじゃダメだって……もう一人の自分が言ってるような気がして』
🎵並ぶ奇妙な世界🎵
『…………』
『…………』
🎵大好きなアナタと🎵
『祐介君――』
『はい?』
🎵綴る愛無きストーリー🎵
『なんか焦ってない?』
『……………』
🎵弱い者に背中を見せながら🎵
『周りを見てるとさ、色々と景色が変わっていく事はよくあることだよ』
『………………』
🎵目をそむけて来たのさ🎵
『俺だって――似たような経験あるよ』
『………?』
🎵弱みなど……🎵
『俺、高校の時にサッカーにかなり入れ込んでてさ……』
🎵故意にさらけ出せる勇気は無いし🎵
『試合に出てとにかく結果を残したかった――』
『……………』
🎵でも何故か🎵
『何のため?って聞かれても――よく分かんないんだよね』
🎵そんな自分に呆きたことも事実🎵
『レギュラーに残ること、試合でゴールを決めること――ただそれしかなかったかな?』
🎵それぞれの良さを生かすために互いがあるんだしHey,Hey🎵
『そうしたら、ある時、練習中に骨折しちゃってね……』
『…………え』
🎵夢の形は何?🎵
『大事な試合前で――悔しかったな…レギュラー落ちだよ』
🎵君は本当は誰?🎵
『俺のいない試合で結果を残すチームメイト……見てるだけで、辛かったし……俺は……自分の運の無さを恨み続けてた』
『……………』
🎵信じられるよね🎵
『でも、そんなチームメイトの姿を見て俺は気付いたんだ』
『――?』
🎵頬に流れる涙を🎵
『あるチームメイトが試合の直前にこう言ったんだ――』
『?』
『「ケンのぶんまで頑張るぞぉ~!」ってさ』
『……………』
🎵合い鍵を失くして🎵
『何気ない一言だったけど……なんか分からないけど泣けてきてさ……嬉しくて』
『ケンさん………』
🎵追い風に吹かれて🎵
『俺がやってたのは、単なる"サッカー"じゃないんだなって……』
『…………』
🎵壊れた街のガラスの上でパレードが待ってる🎵
『色々焦るかもしれないけど』
『……………』
🎵愛される事ばかり🎵
『人生はさ、一度、リセットしてみたっていいって俺はそう思う』
『……………』
🎵期待するその前に……🎵
『そこから見えてくることは、きっといっぱいあるハズだよ』
『…………』
🎵忘れてないよね🎵
『だから前向きにいこうぜ』
🎵君が自分であるのを🎵
『なんで………?』
『え?』
『なんで見ず知らずの俺に、こんなに優しくしてくれるんすか?』
『……………』
不思議そうな顔をする祐介に
健一は微笑んだ
『君を見てると――ほうっておけなくてさ』
『え?』
『――あっ、俺の買ってきたCDちゃんと聴いてくれてるんだな』
机に置かれたCDアルバム【ハラッド】
『結構聴いてますよ♪ケンさん、ありがとうございます』
『あぁ』
『ケンさん、ファンなんすか――?原由子さんの――』
『まぁね』
健一は笑顔でうなづいた
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