2人が本棚に入れています
本棚に追加
健一は病室を出る
『……………』
“目標がないか……”
彼の力にどうしてもなりたかった
決して表面には出さないが、彼自身、心の奥底で闘っている
そんな後押しができるならば―――
“………よし、やってみるか………”
静かにある決意を固めた
翌日の午後
いつものように病室のドアが開く
『あれ!?――ケンさん!』
健一が昼間に面会に来ることは珍しかった
驚いている祐介は、車椅子に座りながらTVを見ていた
『今、昨日のワールドカップやってるんすよ』
『そうか……』
『なんかワールドカップ見てると無性にサッカーやりたくなるんすよね……でもムリか……ハハ……』
『――よし!やろう!』
『え!何を??』
『【ワールドカップ】だよ!』
『え!?』
『【ふたりワールドカップ】!』
『はぁ!?ふたりワールドカップぅ~っ!?』
『じゃあ行くか!』
『えぇ~~!?』
病院の駐車場
健一は、車椅子から祐介の身体を持ち上げる
そして
横付けしたワンボックスカーの助手席に彼をのせた
『ケンさん……何もここまでやらなくても……』
『まぁ、いいからいいから』
『病院の人に見られたらフツーにヤバいっすよ』
『大丈夫、大丈夫』
車椅子を載せ終わると
〈バタン〉
『さて、行くか』
『ど、どこにぃ!?』
『南アフリカ』
『マジで!?』
〈ブォーーーーン〉
車は発車した
最初のコメントを投稿しよう!