探しモノ

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会社に着くなり機嫌悪くデスクに座り、 特に何を言う訳でもなく重い空気を作りだす上司。 わたしが1人になったころを見計らって、 「ちょっといいか?」 来たよ… このちょっといいかは、で済まない。 ココはこうして仕事をする。期限を決めて明確に指示を出す。それを事細かに説明する。こうやってやらないから仕事が溜まる。溜まった仕事を片付けようと残業しまわる。だから仕事が遅い。仕事は遅いけど仕事ができる、そんな奴はこの世にいない。それは仕事ができない奴の代名詞だ。お前はいつもそうだ。そして、こういう俺が言っている言葉も理解してない。わかるかな?俺の言っていること?ちゃんと理解できてる?たいてい、うんうんうなずいているときは、わかってないよね?黙ってるから余計わかんないんだよ。もっとコミュニケーション取らなきゃ。そもそもそういうところだと思うよ、仕事できないの。円滑なコミュニケーションが取れていれば、他に仕事が振れるでしょ。いかに自分が手を空かせて、考えるという立場にいなきゃ。身体じゃない、頭。アタマ使って仕事して! あ、○●君、お客さん来たよ。 …………この手の類の説教を受けてからの接客。 出迎える顔を見ることは自分ではできないが、 きっとひどく引き()っているか、 仮面のように張り付いた、 抑揚のない笑顔で接しているに違いない。 昔、探していたはずのやりがいのある仕事は、 最低人員で最高の売り上げを目論むという 無謀な戦略によって、 労働システム崩壊という道を辿っている。 今となってはAIに支配され、 人間を扱うことが最小限に留められるような 就業改定も行われた。 人が行うのは、 一部の接客業や医療に限られるようになり、 その大半が医療に向けられた。 それは、人口の半分以上が 何かしら医療を受ける側の人間となったからである。 わたしは半ば諦めているが それこそ円滑なコミュニケーションが取れる の同僚と上司に巡り合うことを、 望まずにはいられないのであった。
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