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「朱音!」
ゴールデンウィーク明け初日の朝、学校の正門を抜けたところで、晴翔と一緒に歩く朱音を見つけた。
俺は、あの日以来、顔を合わせることを避けていた朱音の元に自ら走っていき名前を呼ぶ。朱音は振り返り、驚いた表情で俺を見た。
「優樹!どうしたんだよおまえ、コンタクトは?髪まで黒くして、中学の時に戻ってるじゃん」
「なんだよおまえ!チャラ男はどうしたんだよ!」
敵意向きだしの晴翔を無視して、俺は朱音に告げる。
「俺、もう自分を偽るのやめるわ。こっちが本当の俺だから。朱音前に、中学の頃の俺の方が良かったって言ってくれたことあっただろ?」
すると朱音は、俺の大好きな笑顔を浮かべて言った。
「いんじゃね?そっちの方が優樹らしくていいって、俺は思うよ」
その笑顔と言葉に勇気づけられ、俺は鉄は熱いうちに打てとばかりに、ずっと言えなかった言葉を口にする。
「あとさ俺、朱音のこと好きだから」
「え?なんだよおまえ急に、照れるじゃん」
朱音が、すぐに笑ってそう応えたので、友情の意味にとられたと気づいた俺は、違うと首を振り、ありったけの想いを込め告白する。
「俺、朱音が晴翔と付き合ってるの知ってる。
それでも俺は、俺もずっと朱音が好きだって伝えたかった。返事はいらないし、晴翔と別れて俺と付き合ってほしいとか、そんな図々しいこと今は望まない。ただ、知っててほしいんだ。俺も本気で朱音が好きだってこと」
朱音は呆然とした表情で俺の言葉を聞いていたが、やがてその顔が、みるみる真っ赤に染まっていく。
「ちょ…こんなところで急になに言ってんの?彼女は?」
「別れた」
「え?!てゆうか俺と晴翔のことなんで知ってるの?」
「てめえ!今更何言ってんだよ!ふざけんな!俺らが恋人だって証拠見せただろうが!」
「ちょっと待て、証拠って何?何見せたの?」
「なんでもねえよ!それより朱音もなんでこいつの告白に赤くなってんだよ!
てめえ朱音が眼鏡フェチなの知ってて元に戻しやがったな!朱音は絶対渡さねえぞ!」
「いいこと聞いた!」
「いいこと聞いたじゃねえ!おまえ!あんだけ見せつけてやったのに図々しいこと言ってんじゃねえ!てめえに朱音満足させることができると思ってんのかよ!この童貞野郎!」
「うるせえヤリチン!確かに俺は童貞だけどなあ!朱音への想いなら絶対おまえに負けてねえ!」
「やめろおまえら!一旦黙れ!ここどこだと思ってんだよ!とにかく!どういうことなのかあとでちゃんと話し聞かせでもらうからな!」
こうして、晴翔と優樹の朱音をめぐる争いは、晴翔の圧倒的勝利で終わったように見えたが、朱音の初恋が優樹で眼鏡フェチだったことから、これから先より複雑に、激化していくのであった。
チャンチャン(終わり)
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