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兵器ではない。その言葉でエリアスは、ルーシィが自分のことをどう考えているのか理解した。
「結局、僕は人間の域から出てないってわけか」
「当然。キミは人間としての尊厳を捨てず、好奇心と向上心に従った。ただ戦うことしか考えていない兵器ではなかった。肉体改造だけでは、人は変えられない。魔女でさえ人なのだから」
例え命の長さが違おうと、人なのだから。ルーシィはそう言った。独特な価値観の持ち主だ。
どうやら彼女にとっては一番大事なのは人としての矜持であるらしい。
「どうやら、私の考えの一歩先の目線から見て考える姿勢は、変わらないようですね」
校長は感心していたが、どう考えても一歩先どころではないだろう。かなり達観しているような、強さの源の全てを理解しているような。
これは、まるで。
「神の視点から見てるようなこと言うよなー」
横から割り込むように、フォイエルが腕を組んで呟く。その発言もまた、ルーシィは軽く笑い飛ばす。
「はっはっは、神かぁ! そんな大層なものに見えるのか、ボクのことが!」
「いや、そう見えるとは言ってねーだろうが……」
「いやいや、すまない、ちょっと面白いなって思っちゃったな。そんなに全てを理解してるわけじゃないよ。ボクの言葉には無限の反論の余地があるはずなんだ。あまり鵜呑みにしない方がいい」
そんなことを言われたところで、止まらない者も当然いるわけである。
「でも、実際にさっきの闇魔法発動だって、ただ純粋に自分の強みを見たからこそ成し得たものだし。人でなくなっていくような恐怖に囚われていたら絶対に出なかった。人間として、強くなる方法を見据えていたから、見えた境地なんだよ」
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