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「はあ……そんなにボクのことを持ち上げられてもなあ。そんなんじゃ後々すごく困っちゃうと思うんだけど。特にイーリアス、君だ」
こんな形で、この先の未来に何か不穏なものが待ち受けていそうな雰囲気を出しておきながら、ルーシィはあまり説明しない。なので、アイリアはいつも困惑ばかりさせられている。
「うーん、そりゃあ人に頼りすぎるのは良くないかもしれないけど、ルーシィを信頼するくらい良くないかな?」
「そりゃあ信頼していいよ、してほしいし、その方がいいって言いたい……けど……」
ここからは、話せないらしい。深い事情があるというのは皆が承知している。なので、ここは納得しておくことにした。
ただし、事情を半端にしか知らない人物が、ここに一人だけ。
「ルーシィさん。心臓の動きが、変になってるけど、大丈夫?」
「心臓……?」
「この音は……秘密を、鍵のかかった箱に、しまい込んでる音。鍵のかかった箱を、開けようとして、開かなかった時の、ガタンって……そういう……」
ルーシィさんは、アイリアさんの何?
ルーシィに近寄るアリス。ルーシィは彼女の青い目の中に、深淵のような、果てしない奥行きを見ていた。
「えーっ、そう聞かれても。うーん、あえてそういったものを考えるとしたら、そうだなあ、彼女の選択を導くための存在……ってとこ?」
「えっ、あたし何か選択迫られるの?」
アイリアの反応を見て、しまったとルーシィは口を押さえる。本当に中身は男なのかと思うくらい可愛らしい動作と見せかけて、細かい手つきが男性的だ。
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