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「そりゃまあ、迫られは……するだろう。だってその、キミ、最重要人物、だし?」
はぐらかすような言い方をするルーシィ。最初に接触する相手に選んだからには最重要人物なのだろうとアイリアも理解してはいたが、同時にあまり不穏なことは言わないでほしいとも思っていた。
「やっぱり覚悟するってのは難しいことだって思うよ。確かに今までの流れとか、そういうのを見てもあたしがそういう存在だってのはすぐ分かるし、それに対する覚悟も持たなきゃいけない。でもそういうの、あたしはできないよ」
言葉で言えることを、実際に為すのは本当に難しい。特に覚悟というものは、自分でできた気になっていても、いざ求められると足りないことが多いのだ。
その事実を突きつけられる前に、先にそれをアイリアは理解していた。だから怯えてしまうのだ。
何を言っても今は不安にさせそうなので、ルーシィはそれに対して何も言わない。何も気にせずに言葉を投げかけられるのは、ただ一人、エンゼルだけ。
「アイリアはね、自分一人でどうにかしようとしすぎなの。それでそんなウジウジされちゃあ、私はかーなり気分悪いわよ。何の為に私達は一緒について行こうと思えてるかってことよ。本来だったら魔女でもない一般人は蚊帳の外なはずなのに、わざわざ無茶振りに応えてられるのは、一緒に何かを投げ捨てる覚悟をしてるから。だからドーンと構えなさい」
「えっと……エンゼル、そういうこと言うタイプだったっけ?」
「私しか言えないの! だからさっさと構えい!」
言われるなり、アイリアはピッシリと背筋を伸ばす。多分エンゼルが言いたいのはそういうことではない。
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