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「つってもなー……」
そう呟いたときに、アイリアとエンゼルの組手が終わったようで、二人がやって来る。
「エンゼル、半月ぶりに試してどうだったよ?」
「フォイエルが見てた通り。アイリアのバカ火力も集中すれば防げるし、普通の攻撃なら全方位で対応できるわ」
組手の内容は、エンゼルが習得中の防御魔法の耐久力試験だ。エンゼルのほぼ全ての魔法の媒介となる蝶という点同士をつなぐ線を作り、その線同士を面で繋ぐというもの。今まで線を張り巡らせてトランポリンや繭のように使うことはあったが、面の形のシールドを作ったという具合だ。
この魔法は段階的にではあるが、3つの次元を上がっていく構造になっており、習得は困難だった。しかし、早めに仕上げることはできた。やはりエンゼルも極めて優秀な人物であることは間違いない。
一方、アイリアはルーシィと込み入った話し合いをしていた。
「魔女の記憶?」
「そう。ボクは魔女達の記憶領域に入って、それを記録していたってのは前に話した通りだけど、それをキミに見せたいんだ。もちろんすぐじゃなく、そうだね……それぞれの魔女が、倒されるその時にでも見せようかな」
アイリアは少し迷う。見たいか見たくないか。どちらもアイリアにとって真実だ。好奇心はあるが、同時に、あまりいいものではないと分かっているのもあり恐れてしまう。
迷った末に、出てきた言葉は肯定だった。
「それは……うん、気になるね」
「そうかい。じゃあ、ボクと額を合わせてくれ。こうするとスイッチが入って、ボクが好きなタイミングで記憶を見せられるようになる」
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