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言われるがままに、アイリアはルーシィと額を合わせる。すると波打つように周囲の視界が揺らいだような、不思議な歪みが発生した。が、それ以外には特に何かが起こった様子はない。
「本当にこれでいいの?」
「うん。ボクの闇魔法が過去の魔女の記憶領域に侵入してそれを記録するものだとすれば、これをキミのような未来の魔女を含む人間に与えるのは、固有の能力ってところかな。記憶の糸は繋がった。ボクしか接続は切れないし、切るつもりはない。つまり後戻りはできず、記憶を見ることはここで確定したってこと。本当にこれでいいんだね?」
「やった後に聞かれたら、納得するしかないよ」
それに、エンゼルにも言われた。ドーンと構えろと。自分を覚悟の持てない人間と卑下はしない。そうすれば、本当に覚悟を持てる気がしていた。
「なるほどね。そういうことを言えるのなら、エンゼルの影響ってのもけっこう強いもんだな」
「これがエンゼルの影響?」
どうやら自覚は無いらしい。自然に言われたとおりの行動が定着しているようだ。羨ましいことに。
「そうとも。キミはかなり人に何かしら影響されてるはずだ。なぜならば、誰もがそうだから。そして、いい影響をたくさん与えてくれるのは、君のことを思ってくれる人だ。キミはそういう人に恵まれてる」
「……だったら、キミと一緒だね」
アイリアの何気ない言葉が、ルーシィの心に染みていく。いつの間にか、友達がたくさん出来ていたルーシィ。これでもまだ成長の余地があった自分に驚かされる。
同時にどこか物悲しい感覚を覚えるが、それは振り切って、話題を変える。
「ところでさ、何か事件とか起きてない?」
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