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Fertig
白いローブの少女と、スーツ姿の男が、テーブルを挟んで向かい合っていた。先に少女が口を開く。
「ここまでしてもついて来れるからには、よっぽど辛いんだね」
男は何も言わない。予め、少女から伝えられているのだ。言葉で語る必要はないと。
ゆえに、徹底して無言を貫く。だがその表情は、ほぼ無でありながらも恐怖に支配されている。それが雄弁に語っている。
「でも、今日初めてアナタの望みは叶う。そのために、今まで意味不明な司令を毎日遂行してきたんだもんね。でも日常に比べれば、こんな非日常どうってことなかったでしょ?」
確かに、どうということはなかった。男の手足、首元には傷跡だらけ。どれが自傷によるもので、どれが人につけられたものか、もう分からない。だが、もはや全てが痛くなかった。
もはや痛みなどどうでもよかったのだ。
少女はローブを脱ぎ、その下の真の姿を見せる。明るい紫の着物に、紫と白の混ざった神秘的な色合いのミディアムヘア。神々しい少女は、邪悪な笑みを浮かべて語りかける。
「ようこそ、紫白の魔女の部屋へ。はじめまして、そしてこれから末永くよろしくね」
翌日、この部屋で男性の変死体が発見される。この事件はニュースにもなり、ルーシィの耳にも届くことになる。
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