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高校時代なら、勝てます?
「だからさー、絶対あそこは真っ直ぐ投げちゃいけなかったんだよ。2年前にメジャーでホームラン30本も打ってたわけだか……」
「せ、先輩、危ない!!」
「……えっ、わあああぁぁっっ!!」
目の前で、エースである3年生の先輩が車に轢かれた。
隣を歩いていた勝星翔(かちぼししょう)必死に声を張り上げたが間に合わなかった。
最後の夏の大会まであと2週間という時期に。
野球に入部して3ヶ月である俺。唯一のピッチャー経験のある1年生であり、帰り道も同じ方向だからと、先輩は良く面倒を見てくれた。
長身でさわやかで、結構モテる。
変化球の握り方やボークギリギリの牽制の仕方。ボールを速くするための練習方法。
投手陣の走り込みと称して、女子バレーボールの練習を覗き見する絶好の穴場見つけ出しや、未成年でもアダルト雑誌を売ってくれる本屋を教えてくれたりと、グラウンドの中でも外でも、1番仲良くしていた先輩だった。
その先輩は今、血を流してアスファルトの上に倒れ込み、苦痛の表情を浮かべている。
手を伸ばそうとした右足首が曲がってはいけない方向へ、歪なまでにくたっとぶらついているのを見て、俺は何も考えられなくなってしまった。
那須塩原駅から800メートル。
コンビニとレンタカーリースがある交差点の側。
近くにいた通行人が集まり、救急車のサイレンが響き、夕暮れの事故現場は大騒ぎになっていた。
たまたま近くを通りがかった野球部の部長を務めている先生が自転車を投げ捨ててやってきたのを見て、ぶあっと溢れだした涙が止まらなかった。
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