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彼女との出逢い
ぼくはとある街を歩いていた。
数日前に推しのアイドルの無期限活動休止が発表され、仕事のストレスも重なって、無気力になっていた。
「はぁ…。」
ぼくの口から漏れるのはため息ばかりだった。
いま思うと、あのときはかなりどんよりとした雰囲気を漂わせながら歩いていたのかもしれない。
「どうしたの?そんな暗い顔をして。」
聞き覚えのある声がした。
ほくが顔をあげると、そこにはぼくがよく知る彼女がいた。
でも、彼女はぼくのことを知らない。
「え…!」
ぼくは正直驚いた。
ぼくの前には、ぼくがSNSでずっと気になっていた彼女がいた。
たまに「いいね」を押していた彼女がそこにいた。
「ん?」
彼女は心配そうにぼくを見つめていた。
「ごめんなさい。ちょっと考えごとをしていて。」
ぼくは彼女に謝った。
「ん?」
「それに、急に君が現れたからびっくりしちゃって。」
ぼくが彼女にそう伝えると
「はいっ!おいで。」
彼女は両手を広げハグを求めてきた。
ぼくは戸惑っていた。
「もう!」
彼女は可愛く怒ると、ぼくに抱きついてきた。
「ぎゅー♪」
彼女は行動を声で表すタイプらしい。
ぼくは…SNSでその声にも癒されていた。
「あ、あの、ちょっと恥ずかしいんだけど。」
ぼくは照れながら彼女の横顔を見た。
彼女はそんなぼくを見て軽く微笑んだ。
「良かった。笑顔になったね。」
彼女はそう言うと、もっとしっかりくっついてきた。
「ぎゅー♪」(ぎゅー♪)
今度はぼくも声にしてみた。
それを聞いた彼女は笑ってくれた。
ぼくは堪らず彼女にキスをした。
ちょっと軽く唇に触れるくらいのキス。
ぼくはキスをしながら、彼女を優しく抱きしめていた。
「あ、ごめん…。」
ぼくはいきなりキスをしたこと、抱きしめてしまったことを謝った。
「ん?」
彼女はきょとんとした。
「本当に笑顔が戻ったね。このあと、私のお家に来ませんか?」
彼女の突然の発言に、ぼくはふたたび驚いた。
ぼくの返事を待たず、彼女はぼくの手を握ると歩きだした。
「こっちでーす!」
ぼくは彼女の無邪気さに、また笑顔になっていた。
そして、彼女の背中に向かって「うん」と頷いた。
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