ゴミ屋敷のオッサン

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 結局、お父さんには内緒のままにした。警察も空き巣が盗んだと思ってないみたいだったし、捨ててしまったのなら、お金が戻ってくる可能性も低いと言っていた。でもお金を捨ててしまったなんて勿体ない。探し物としてインターネットに出そうか。報酬は一割にして。インターネットカフェでホームページを作ることも考えよう。それにしてもそれだけあればパソコンや我慢していた洋服も買えたしブランドのバッグも買えた。まあ過ぎてしまったことを何時までも悔やんでいても仕方ない。俺は以前買った本をもう一度読んだ。図書館に行ってもいいのだが、ちょっと遠い。だが、同じ本は三回読むと飽きる。しかし、お金がないので新書も買えない。そうだ。ゴミ屋敷の中に本が山積みだった。あれを貸して貰えたらいいな。オッサンの家を訪ねてみようか。  翌日、学校から帰り、五時になったのを確認して散歩に出掛けた。今日は風が冷たい。春は半袖で過ごせるような暖かい日もあればコートが無ければ外を歩けないような寒い日がある。モッズコートの前のチャックを上まで閉めて速足で歩いていると今日もオッサンがコンビニから出て来た。話し掛けるチャンスだ。俺は小走りでオッサンのところに向かった。 「あの、いつも会いますね」 「え、君は?」 「俺、近所に住んでる学生です。平日はいつもこの時間に散歩してて、この前もコンビニから出て来たところで会ったんです」
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