ゴミ屋敷のオッサン

11/15
29人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
「そうか。俺は三時に菓子パンを買うのと、この時間に夕ご飯を買いに来るからね。それでだろう。何か用か?」  いきなり本を貸して欲しいとは言えないし、どうしよう。 「実は俺、オジサンの家を知ってるんです」 「……」 「家の中に読んでない本ありますか?」 「ああ、あるよ。まさか片付けろって言うんじゃないだろうね」 「いや、俺の家、お金が無くなっちゃって、探してるんですけどね。本を買いたいけれど買えないんです」  オッサンはフッと笑った。 「本が貸して欲しいのか」 「はい、実は」 「いいよ、家に他人をあげるのは数年振りだが高校生なら歓迎だ。俺は子供が好きなんだ。いや、高校生はもう大人だって言うかもしれないが、俺からしたら子供なんだよ」  俺は嬉しくなってガッツポーズをしそうになった。ゴミ屋敷の中は汚いだろうが、オッサンはそこで暮らしているんだし、病気になるほど不衛生なわけではないだろう。それに片付ける手伝いをしてあげられるチャンスだってある。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!