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二人でオッサンの家に向かう。オッサンは名前を吉田だと教えてくれた。
「吉田さん、本が好きなんですか?」
「ああ、国語の教師をしていた時期があるんだ。ほんの数年だが中学校で働いていた」
そうだったんだ。でもなんで辞めてしまったんだろう。
「辞めちゃったんですか?」
「ああ、俺の妻が海外に転勤することになったんだ。アジアの暑い国だよ。悪い条件じゃなかった。だから俺も海外について行こうと思ってね。だが来るなと言われたんだ。それで自暴自棄になったのさ」
だから民族衣装みたいなものを着ているのか。奥さんに未練があるんだな。こんな話を振ったら可哀想だった。何か他に話題はないのか。
「コンビニのご飯、美味しいですよね」
「そうだな。でもやっぱり手作りが一番だよ。来夢くんの家はお母さんが料理を作ってくれるんだろう?」
「うん、今度、遊びにおいでよ。本のお礼」
「アハハ、お礼か。現役の教師のときに買った自分の本はゴミの下の方に埋もれてしまっているよ。上の方にあるのはゴミ捨て場から持って来たものばかりだ」
ゴミを捨てないだけじゃなくて持って来ているんだ。だから庭も家の中もあんな状態なんだ。俺が片付けたとしても習慣をあらためて貰わなくては直ぐに散らかるだろう。そんなことを考えて、お喋りしながら歩いていると吉田さんのゴミ屋敷に着いた。中は1メートル以上ゴミが積み上げられていてテーブルも見えなかったし思っていた通りテレビも埋もれていた。
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