ゴミ屋敷のオッサン

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「これから、買い物があったら俺が行ってあげようか?」 「買い物って行っても食材くらいしか買いに出掛けないですよ。そうだ、明日、ドラッグストアで洗剤を買って来て貰いましょうか」 「五百円でいいよ」 「それが目的ね」  お母さんはハアッと溜息をつく。だって時給九百円で計算すると一日四千五百円だけだ。俺はパソコンを買うのを目標にしているのでバイト代だけでは足りない。ブログを作って環境問題について書きたいんだ。  俺の家の二階には俺の部屋とお父さん、お母さんが一緒に寝る部屋がある。その他に小さい書庫。そこには百科事典や俺が小さい時に読んだ童話まで置かれている。もう高校生なので童話や絵本を読むことはないが、俺が親になって子供が産まれたら読んであげることも出来るだろう。 「二階に行って布団を直して来ますね」  お母さんはそう言って階段を上って行った。それから少しして青い顔をして帰って来た。 「何かあった?」 「ちょっと……」  そう言ってお母さんは口を(つぐ)んだ。まあ、言えないこともあるんだろうし、些細なことは気にしないでいよう。憂鬱な女の日になったのかもしれないし、男に言えないこともあるだろう。俺は青い顔をしたお母さんの顔はすっかり忘れた。  リビングでテレビを観て夕ご飯が出来るのを待つ。俺はお笑い番組が好きだ。人間は笑うのが健康にいいと言われている。ゴミ屋敷のオッサンも笑うことがあるのかな。
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