ゴミ屋敷のオッサン

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 近所にゴミ屋敷がある。二階建ての白い壁の家で、それ自体は古くはないが、家の庭にはガラクタやゴミ袋などのゴミが山になっていて、カーテンの隙間から窺える家の中も相当ゴミが溜まっている。家の持ち主は変わったオッサンだ。暑い国の民族衣装みたいなものを着て、派手な髪飾りをつけている。でも髪はきちんと散髪に行っているようだし髭も剃ってある。だから不潔というわけではないらしい。  その家は近所の人が迷惑しているのか『ゴミ屋敷反対』とか『不衛生だ、引っ越せ』と書いてある張り紙が塀に貼られている。一度目撃したのだが中学生がゴミを投げ込んでいた。  俺の家は群馬県にある。群馬といっても山の中ではない。埼玉県に近いところにある高崎市だ。高崎市は人口35万人以上もいてかなりの都会だ。駅の周辺は駅ビルやデパートなんかがあるが俺の家は駅からは遠い。バスで二十分くらい掛かる。ゴミ屋敷の家は俺の家から徒歩三分くらいの場所だ。ネズミが出たりゴキブリが出たり、衛生上よくないと思う。住民は反対しているようだが市は何も言わないのだろうか。  今は四月の終わりだ。俺は高崎市内の高校に通っている。市内といっても電車通学だ。両毛線という電車に乗る。部活は科学部だが殆ど活動していない。なので夕方にウォーキングをしている。ウォーキングといっても近所をぐるりと二十分くらい掛けて歩くだけだ。そこで嫌でもゴミ屋敷を見てしまう。なんで使わないものを溜めこむんだろう。大事なものが見つからなくならないのだろうか。
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