第1話 しりとりファイターかなた!

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第1話 しりとりファイターかなた!

しりと だか 「そっち投げるぞ!」 「こっちだ、おーい!」 「ラス…イタッ!……痛」 言葉を(つむ)ぐ口めがけ黒板消しが飛んできたのは、果たして偶然か否か。 少年はぺっぺと汚れたものをそこから吐き出し、投げた相手へと返した。 「今週大会やって、タカオ?」 「おうよ!奈良県立少年野球大会も、いよいよベスト8よ、チビガリ君!」 チビガリと呼ばれた少年はハハハと苦笑いし、元から泣きそうな八の字眉を、さらに急カーブさせる。 そうして教室の自分の席に戻っては引き出しから「いつものノート」を取り出すが、さっきの巨漢少年はまだ用があるらしい,今度は仲間と共に彼の周りをぐるぐる野犬のように徘徊してきた。 「勉強熱心やな、かなたは」 「どうも…」 「何書いてんのか見せてくれよ」 「あ、ちょっと!」 ノートが取り上げられ、最初の1ページが大声で読まれる。 「ツバメ→面倒くさい→芋→望月さやか!」 「はあ、何でうちの名前が入ってんの!?」 呼ばれた少女に睨まれ、かなたは大慌てでタカオの手からノートを奪いかえそうとする。が、相手は流石ピッチャーだけあって投球は抜群,今度はノートを仲間へ投げてよこした。そして読んだら次へ、また次へとパス。 「ねえ、やめてよ!」 「カレーライス→寿司→社会科→柏木センセイ」 「私がどうしたって?」 「げっ!」 幸い廊下に持ち逃げされる前に怖い担任がそれを見つけたため、ノートはすんなり持ち主へと戻ってきた。しかし女子達からは嫌な目で見られるし、男子達からは笑われるしで、午後の授業を鬱蒼とした気分で過ごしたかなただった。 でもこれが終われば、待ちに待った放課後がやってくる! 今日は大事な約束が彼にはあったのだ。 そしてそこにこそ、このノートは絶対に携行しなければならない必需品だったのである。
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