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いざとなると、こんなにも言葉が出てこない!
かなたは自分のポケットの中を探ってみてがく然とする。
「キャンディ!あ~持ってたのにい!」
「アハハ、ざーんねん!とまあ、こんなのが、アンタとうちがこれから進んでいくファイトの世界」
みあが紅茶を一口してはかなたに話しだす。
「地区大会から先は、いろいろなゲーム方式があって、それに応じた戦い方や、沢山の言葉が求められてくる。今みたいに分野を限定された中でせなアカンかったり、指定された言葉をしりとりの中で拾っていったり」
「まず普通のファイトやないってことだね」
「そう。だからこそ言葉のタンクを満杯にしておくことと、技術力を磨くことが必要。あと慌てず、ぱっと回答できる落ち着きと瞬発力もな」
「うん…」
「けど、それを楽々やってのける強いライバル達と戦えるんや、楽しみやろ?」
「……」
かなたは黙りこんで下を向いた。
確かに友也や地元の人以外と戦いたくて、予選に足を踏み入れたのはある。しかし今、先の成績を振り返っては、そんな好奇心よりもはるかに不安のほうが勝ってしまう。
「みあは、何で俺を選んだん?」
「え?」
「この前の決勝戦の時」
みあとかなた,もう一人のライバルの3人で最終的に争った。
ただ実力のある彼女からすれば、あのゲームでの自身の勝利は見えていたはずで、むしろ自分のパートナーとしてどちらを選ぶか、好きに選択できるような状態になっていたはずだ。そうでなければ、最終的にかなたの援護をするように、しりとりをお膳立てするはずはない。
「あいつ嫌な奴やったかもしれへんけど、俺よりは相手を攻めて行く方法も知っとったし、実力で言えば、俺より格段上」
「かなたくん…」
「かなた…アハハ!」
するとピンクの女史はふうと息を吐いたかと思うと、いきなり大きく笑いだした。
それから椅子から立ちあがり、ベランダの外を眺めながら言う。
「なぜうちらは1人やなくて、2人選ばれるシステムになってるかわかる?」
「え?」
「それはな、2人で協力して戦いやっちゅうことや!」
そしてさらに大きな声で、堂々と青空に向って投げる。
「うちには夢がある。しりとりファイトで日本一になりたいんや!
そのために今回、最強のパートナーを選び出したつもりやで」
「……」
「かなたくん、アカントコはこれから直していけばええ」
少年が返す言葉に困っていると、光が真剣な表情で解いた。
「君は君で色々思うコトはあったようやけど、最初から完璧なファイトができる奴なんておらん。実際は沢山のライバル達と戦っていくことで、自分のスキルを高めていくんや」
「光さん」
「とにかくみあはな、君とのチームワークに可能性を感じてるんや!せやからどうか、俺からも頼みたい。
妹と一緒に、日本一のしりとりファイターになってくれるか?」
「頼む!」
そうして2人で頭を下げてくる。
しかし、本気で言っているのか?と耳を疑いたくなる言葉の数々は、なぜか少年の中にも底知れぬ勇気となって希望の芽を出した。
もちろんまだ信じられないけど…と、ちょっとはにかんで笑って見せつつ、かなたは彼女の手を握る。
「ええの?!」
「正直、地区予選に出られること自体まだ夢のような感じやけど、でも、どこまでできるかわからへんけど、運がツキるまでやってみようと…わっ!」
「おーきに!ホンマにありがとう!!」
いきなりぎゅっと抱きつかれ赤面するかなた。
しかしこの決意が、いよいよ新しい扉を明ける鍵となるのである!
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