第4話 お茶のお供もやはり

3/3
前へ
/127ページ
次へ
地区予選は、約1カ月後の京都で開催される。奈良・京都・滋賀・和歌山の4府県を勝ち抜いたファイター達が集い、そこで勝利を収めた者達が『近畿Bブロック』代表として全国に歩みを進めることになる。 またしりとりのクラスは様々あり、かなたとみあが属する『ノーマルクラス』の他に、科学分野のしりとりを専門とする『サイエンスクラス』,国語的な面に比重を置く『リテラーチャークラス』と、特殊なファイトを戦う選手もいるが、まず通常のしりとりがベースのノーマルは、とにかく広く浅くが基本。 この1ヶ月間、病める時もすこやかなる時も、日本一になるためのしりとり特訓に明け暮れたかなたである。 図書館に籠って言葉の収集をすることはもちろん,しかし実践感覚も大事で、かなたとみあは週末、相互に県内を行き来しながら、実践形式のトレーニングを積んでいった。時には光やまりか,友也を巻きこみながら、着々と来たる日に備える。 夜にはリモートで、福岡にいるたくまが息子の相手をしてくれることもあった。 『いよいよ明日だな』 「なんか1ヶ月あっという間で、俺としては何も変わってない気がするけど、でもちょっとは粘れるようになった気がする」 『うん、お父さんもそう思う。明日は見に行けなくて残念だ。気負いせず、いつものお前でのぞめば大丈夫だよ』 「わかった」 『じゃあ、今日はここまでにしよう。早く寝て、明日に備えなさい。おやすみ、かなた』 「うん、お休みたくま」 決戦会場は、武蔵房弁慶と牛若丸が相まみえた鴨川・五条大橋の近く,『ことのは会館』と呼ばれる場所で行われる。この会館はなんと地元の有力人物の寄付を得て協会が建てたという、しりとりファイト専用のスタジアムらしい。見た目は美術館のような箱物で決して大きくはないものの、四方を観覧席で囲んだボクシングスタイルのファイトルームから、畳ばりのお座敷風ルームまで色々なスタイルの部屋がコンパクトに収納されている有能な会館だった。 他にも着物生地を縫って合わせたようなタペストリーが飾ってあるロビーには大型モニターもかかっていて、全国の予選状況が適宜更新されては映し出されていた。 かなたは、今日は引率教員となっている光と一緒にその様子を眺める。 「他の地区でもどんどん始まってるね!」 「ああ、そのうち俺達の試合情報もここに」 「かなた、さっそくファイトや!」 そこへ対戦カードの抽選に行っていたみあが走って来て、2人を呼んだ。 同時にモニターからチャイムがなり、『9:30開始 ノーマルクラス第1試合 奈良vs和歌山 ファイトルーム3』と表示が更新される。 「さ、暴れてこい!」 光が2人の肩を鼓舞するように叩き、自身は急いで観客席の場所取りへと向かっていく。 かなたもいざ『ノーマル/奈良』と書かれたワッペンをみあからもらい、共に専用の入場ゲートへと向かっていった。
/127ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加