第5話 初タッグ! vs和歌山代表

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第5話 初タッグ! vs和歌山代表

一方、その頃まりかは。 「やったー、間にあった~!」 本来なら息子と一緒に京都入りするはずだった予定が、今朝、誤って勤務先の図書館の鍵を持ち帰っていることに気づき、同僚へ渡すまで地元で足踏みを食らってしまった。その後車を走らせて来たはいいものの、市内は何やら別の催し物もあるらしく大渋滞,駐車場を探すにもひと苦労で、何とかぼったくりのような料金を払って1台車をねじこませてきた次第である。 おまけに開始1分前にファイティングルームの門を開ければ、中央の舞台を取り囲む観客席もほぼ満席ときた。光が先に場所取りしてくれて、本当に助かったまりかである。 「ドジですんまへん…」 「それだけお母さんも頭がいっぱいやったってことやないですか」 「まあね。だって息子の晴れ舞台やもん、そらそうや!」 さあ、舞台にスポットライトが当たり周りが暗くなった。 コンビとなった2人の初戦がいよいよ幕を開ける。 「これよりノーマル第一試合:奈良県代表 対 和歌山県代表を開始いたします」 進行役の女性が高らかに宣言すると、観客から拍手が沸いた。 4名の選ばれし者達が審判団について舞台へと登場し、向かい合って設置してある回答台の前へとつく。 まずは奈良-多幸みあと山野かなたのペア。 みあはすでに慣れたもので観客に向けて手を振っているが、かなたは見る人の多さにただただ驚いていた。 対する和歌山-梅沢美友(みゆう)恭士郎(きょうしろう)は、どうやら姉弟らしい。 ぽっちゃりとした体型に、毛糸で出来たパンダの帽子をかぶっている。 年は中学生ぐらいといったところだろうか。 選手紹介が終わると、ステージ中央の床が開き、プラネタリウム機械のようなマシンがズズズと上がってきた。しばらくの起動音の後、マシン上部が光ったかと思うと、5枚のカードを画像で空中に浮かび上がらせる。進行役が今回のゲームの説明をはじめた。 「予選試合は、お題回収しりとりです。各選手には、これから5枚ひと組になったカードの束を引いて頂きます。これにはスポーツや学校の教科等,各分野にまつわる単語が1つずつ書かれていますので、その言葉をしりとりの中で回収していってください」 続いてマシンは細かなルールを投影する。 ・抽選で決まった順番で10分間しりとりを行い,その後5分の休憩を挟み、今度は逆回転で、また10分行う。 ・引いたカードは、相手選手並びに観客へは非公開とする。仲間の選手には見せて良いが、仲間が単語を回収しても得点にはならない。 ・チームごとに取れた単語数を計算し、多い方が勝ち。 抽選の結果、前半の流れは①美友→②かなた→③みあ→④恭士郎の順で流れることになった。 これを受けて2人は、試合前に引いたカードを見ながら作戦を立てる。 「かなたは自分の単語を取るのに集中しい。うちのことは気にしないで、取れるもの取ってき」 「うん」 彼のカードは、『たこ』『いか』『えび』『まぐろ』『ぎょく』,要するに寿司ネタが書かれていた。 「ただ、これは前半じゃ避けてほしいなあ」 みあが『ぎょく』を指さす。 ぎょくは寿司でしか使わない玉子の言い方だ。つまり 「出せば、すぐに相手にもどんな分野を取っているかがわかってまう。したら周りこんで単語を奪われるかもしれへんから注意しい。言わずもがな,一回出た言葉はしりとりじゃ使われへんからね」 「了解!」 一方、和歌山の梅沢姉弟。 「まずはうちの言葉を取るのが先よ,アンタはどんどん私にパス出してきな」 「うん、要するに姉ちゃんの単語の頭文字を回していけばいいんだね」 「あのピンクの女は前年度の全国大会出場者,絶対何か企むに違いないから用心しい。もう一人のチビちゃんは…何あの泣きそうな眉」 「ププ!いかにも弱そう!」 「あの子絶対ボロ出すぜ、したらもうこっちのもんだわ」
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