第5話 初タッグ! vs和歌山代表

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「では全国に向かって、レッツしりとりファイト!」 ブザーがなり、試合が開始された。 最初の言葉が投映機に映し出される、はじめは『て』から。 「天ぷ」 「ら…」 「イナップ」 「ー」 「」 「…」 立ち上がりは双方順調。奈良予選では緊張で一気に舞い上がってしまったかなたも、ここまで練習試合を重ねてきた成果か、割と衆人環視の中でも落ち着いてスタートを切ることができた。 「」 一方、みあは果物で言葉をつないでいく。 見かねた美友が後から「枇杷(びわ)」とカットにかかってきたが、内心ほくそ笑む。 ”あ、いや待て。” しかし相手の表情を見るやすぐに見解訂正。 “疑っとる目や。何となくフェイクとわかってるか”。 ご名答、彼女の回収すべき分野は果物ではなく、実は地名である。 これは油断できないなと、自分もまず最初の単語を取りにかかった。 かなたの「つ(月)」を受け、 「ょう(京都)」 1つゲット。ただそれに勘が働いたのは恭士郎の方が早かった。 「(栃木)!」 その瞬間、姉が弟を睨む。 自分の単語が取れるようなひらがなを入れて来いといったのに、命令に反した相手に対する抗議の表情だ。 「チッ,ー」 怒りは収まらず、次に彼女は舌打ちと共に投げやりな言葉を入れてきた。 "やった、取れる!" まさかそれが思わぬ呼び水になるとは知らずに。 「!!!」 会場内のスピーカーがキーンとなり、投映機の文字も一瞬揺れた。 周りの誰もがその大声に目を丸くし、仲間達は頭を抱える。 「タ…タコ…」 かなたは改めて蚊の鳴くような声で言うが、後の祭り。 これには若干険悪になっていた姉弟も、互いの顔を見合わせにやり笑った。 「海の生き物なんだね、あの子」 「きっと水の中におるものを集めとるんや」 観客席の中からもまことしやかにそうささやく声が聞こえ、まりかも光も額に置いた手が離れない。 その後、作戦を変更した和歌山代表はやはり水際をうろつきはじめた。 何とかみあがお取りになって、さらに果物を出したり、時に地名で気を引いたことで事なきおえたが、一歩間違えれば、ほとんどの寿司がパンダのお腹に収まっていたに違いなかった。 冷や汗ものの前半が終わり、5分間の休憩に入る。 しかし選手にとっては、この時間で勝負が決まると言っても過言ではない、大事なミーティングの時間だ。 「ごめん、ヘマした…」 「大丈夫、初心者ならようあること!それよりも今は現状把握が重要や」 現在2人が回収した単語は、かなたが『タコ』の1ポイント,みあが『京都』『宮崎』を取って2ポイント,合計3ポイントだ。幸い相手の水際・地名探索は両方とも外れてくれて、回収不能になった言葉はまだない。 「な?そんな世紀末の顔しなくったってええやろ?」 「そっか。うん、そうだね」 「ちなみに相手が出したものは…」 投映機は休み時間中も動いていて、空中にこれまで出た単語を表示してくれている。古い型なのか文字が一部つぶれているが、目をこらして見てみると、 「弟のほうは、ルーター、チーター、ワサビ、栃木etcか。あまり統一性ないね」 「多分姉の回収を今は補助しとるだけやろな。一方、姉の方を見てみ」 タンゴ、タンス、ザル、ギター、モルモット、うさぎ… 「これを見て、何かわかるかかなた?」 「動物2連チャンだ!」 「ピンポーン!モルモット、うさぎ、まさにそれや。ただ、ここから姉が持っとるとちゃうかなーっていう、あと2つの生き物が隠れとるんやけど、何かわかる?」 「え!」 「最初の方の、弟から姉へのやりとりを繋げてみると」 ルーター→タンゴ,チーター→タンス 「“タ”を姉ちゃんに送ってる!」 「そう。ところがパスを受けた肝心の美友の次の言葉はどっちも動物やない。つまり二度も恭士郎の“タ”を拒絶してるんや。なぜか?」 「うーんと…」
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