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素敵なことがあった帰り道は、スキップステップランランランだ。
皆の応援でエネルギーを補給した少年は、改めて全国大会に向けて再始動していく。
夜8時-
まりかに早めに風呂を沸かしてもらい、大慌てでパジャマに着がえては、家族で共有しているラップトップの前に座った。
いつも単身赴任の父・たくまと会話しているパソコンの画面が今日は4分割され、自分と3人の顔が映りこんでくる。
「ハローハロー!」
「よお、俺の新しい仲間達!」
「おばんどす」
共に近畿B代表として全国に挑むメンバー、みあ、翔也,遥。
これから本大会が開催するまでの間、パソコンを通して、遠方に住む仲間達とコミュニケーションを取って行くことになった,さっそく今晩が第1回目の会合だ。
「よろしゅう~v」
みあは背景がピンク、着ている服もピンクと、大方予想通りの格好で参加してきた。
「何かにぎやかだね」
「おーこいつらか?いやあ今日鳥小屋修理するつもりが、逆に凝って全部分解しちまってよ」
翔也の画面は、最初から変人感満載だ。
彼が鳥好きで沢山飼っていることはこの前の予選の時に聞いていたが、今日はその鳥達が右に左にと自由に飛び回っている。さらに彼が着用しているTシャツには「このチキン野郎!」の筆文字が。どこから切っても、おもしろそうな理系男子だ。
「先日は遠いところから、よう来られましたわ,大変やったやろ」
「あ、はい!よろしくお願いします!」
この度チームリーダーとなった遥は、先日同様、袴姿でしっかり決めているものの、予選の時とは異なった穏やかな表情をしていた。
てっきり自分とは世界の違うお穣様かと思い構えていたかなただったが、その温和な顔に心のバリケードも溶けて行く。
良かった,仲良くなれそうだ。
ちなみにみあの画面の後ろでは、そんな遥見たさの光がしきりにハートマークを出してメロメロになっていたが、話の進行上ひとまず無視する。
まずは4人が仲良くなるための談笑タイムだ。
さっそく、かしまし娘のみあが翔也に話しかけた。
「そういえば翔也くん、新しい仲間達って言ったけど」
「おっと、しりとりファイト界隈じゃ、俺のことは「トビやん」って呼んでくれ。チキン野郎のトビって言やあ、どこでも戸を開けてくれるぜ」
すると遥からまさかのツッコミが。
「何がチキン野郎や」
「そう、そのやりとり!トビやんと遥ちゃんはさ、去年の全国大会も一緒に出てたよね」
「へえ、仰る通りで。もうかれこれ4回目かいな」
「そう、B代表として共に闘ってる、いわば腐れ縁ってやつや。ちなみにみあもそうやな,去年、大坂からあがった近畿A代表で全国に来た」
「うん!前回はまあ1回戦敗退やったけど、今年こそ日本一取ったるで!」
遥の全国1位という事実にも驚いたが、以外と横の2人もキラキラした経歴を持っているようだ。
とんでもない人達を味方につけちゃったなと、かなたは若干尻込みしつつも、なるべく積極的な程で話に加わって行く。
「でも僕はじめてリテラーチャーの試合見させてもらったんですけど、すごく難しくてびっくりしました」
「ああ、そら古文習ってない小学生からすればそうやろな。ただうちからしてみれば、あんなペーパーテストのようなもん、お言葉繋ぎとちゃいますわ」
「オコトバツナギ?」
「リテラーチャーではしりとりのことを"お言葉繋ぎ"言うんやけど、本来は」
と遥が言いかけた途端、なぜかみあがいきなり声をはりあげた。
「うちが説明したるわ!」
そしてルーズリーフを取り出しては、手元で何かを書き始める。
「リテラーチャーはな、単語やのうて文でしりとりをするのが本来のやり方なんや。例えばお題『奈良』で、しりとりせえ言われたとするやろ…」
しばらく光も交えた多幸兄妹がつぶやく声が聞こえる。そうして5分後―
「こんな感じや!」
奈良の都の八重桜
ラッキークッキー ケーキもあるよ
よってらっしゃい 見てらっしゃい
一番おいしい ほーせき堂
かなた・トビやん・遥の3人は、一瞬時が止まったような表情をする。
みあはフンと自慢げに胸を張ってみせた。
「どや!ちゃんとしりとりになっとるやろ?」
「あ、うん…」
一足先に解凍したかなたが軽くうなずく。
「確かに。文の終わりと次の文の頭が繋がってるね」
「まあ実際は、うちと対戦選手とで交互に繋いでいくんやけど、いきなり言われても難しいから、今日は1人で作ったわ。しかも何か俳句っぽくもあるやん?」
「え、あ、うん?」
少年は段々返答に困り始め、後ろに引き始める。
変わりにトビやんが眼鏡のブリッジをつり上げながら首を傾げた。
「俺の科学脳じゃ解明できない、未知なる文だな」
「せやろ~vはんなりとしててオモロくて、ほんで店の宣伝まで入っとる!」
みあは何でもポジティブに物事を受け取る女である。
そしてそのまま彼女はブレーキをかけることもなく、本家へと突っ込んでしまったのだった。
「で、言葉繋ぎは、この文の出来ばえで勝負を競うんや。な、遥ちゃん!」
すると遥は。
「………ええ」
ただにっこりとほほ笑んだまま、口元だけを動かして返答したのだった。
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