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翌日、かなたがパソコンを開いてみると一通のメールが。
相手の名前を見て、急ぎ開封する。
『かなたさんへ
安国寺です。昨晩はどうも。
みあさんのリテラーチャーの説明について、若干の訂正と補足がありましたので、個人的にメールでお伝えいたしました』
昨晩ももしかしてと思ったが、やはり笑みの裏に含まれていたものは多いにあったらしい。
そこから若干ではないみあのリテラーチャーの説明に対する、ほぼ全文取り替えの解説が、まるで某インターネット検索辞書のように出てきた。
まずは誕生秘話:
『本来お言葉繋ぎというのは、平安京でひらがなが発達した際、一つひとつの文字の力を数珠のように繋げるという思想より生まれました。人々の願いや祈りを言葉に託した儀礼的・政治的なもので、安国寺派が京の都一千年以上に渡って受け継いできたうんぬんかんぬん』
続いて成長過程。ここから若干雲ゆきあやしくなりけり。
『以後、そんな由緒あるお言葉繋ぎは何や知らしまへんけど、新都市(江戸)に持ち込まれては、俳句や川柳なんていう流行りものに混ざってしまいまして、よいよ挙句の果てにはゲーム化』
ラストスパートは、もはや歯に衣着せぬ辛辣な言葉のオンパレード。
『従ってみあさんは「言葉繋ぎは俳句みたい」などと言うてはりましたけれども、俳句がこちらの真似をされただけであって、たかだか400年前に誕生した言葉遊びと一緒にされますのは何の冗談やろか。ホホホ、面白い❤あと昨晩彼女が作った、滑稽で美しくもない繋ぎなど愚の骨頂。そこは若干の訂正どす』
とまあ、かなたの中で本人の映像交えてメールの文言を再生してみるとこんな感じである。
言うまでもなく、激怒している!
「はあ~」
30行読破してどっと疲れる。
しかし最終章には、きちんと訂正された遥の言葉繋ぎが。
『ちなみに昨日のお題「奈良」で繋いだ場合の一例としては、こうなります』
古刹名所を 巡り見て
寺の木陰に 涼求む
昔の足音 耳に優しく
国始思ふ 大和路の夏
「わあ、さすが!」
昨日のみあの文章も(小学生からすれば)面白いけど、比べてみればやはり歴然の差だ。
実は今日の昼休み、同じ題でかなたも考えてみたのだが、やはりみょーちくりんなおかしな文章になってしまったのだ。
昨日は相棒の繋ぎにドン引きしたのに、いざ自分もやるとこの有様。
かなたは自分がノーマルクラスで本当に良かったと、安堵する他なかった。
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