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第8話 フクロウ博士ワットワーズ
お喋りなみあとしては全く悪気なく解説してくれたのだろうが、しゃしゃり出て解説したこの一件は、確実に遥に真綿付きの有刺鉄線を張られてしまった。
次の集まりの際には、さっそくその温度差が表面化する。
みあが、
「これからこの会議を通じて、皆でしりとりの特訓や!」と意気込んでも、
「はあ、おきばりやす」と遥はにべもなく拒否。
「リテラーチャーは、ノーマルやサイエンスと違うて言葉の繋ぎ方ちゃいますから」
「せやけど一緒のチームやん!やろうや一緒にい!」
「うちはせいぜい“俳句づくり”に精出しときますから」
「何だもう、ノリ悪いな…」
「別にどう稽古しようとうちの勝手やろ」
最後は遥もちらっと口を尖らせ、あとはだんまり。
そんなすれ違いが2回ほど続いた挙句ー
「ハハハ、結局お前と俺だけになってしもたな!」
すねた女子2人はいよいよ出てこず,かなたとトビやん,男だけの練習場所になることに。
とはいえ、この愉快なチキン野郎ときたら全く危機感の欠片もない。
今日も白い手乗り文鳥を机の上で散歩させながら、自身は夕飯のフライドチキンを頬張っている。
「安国寺もプライド高えからなあ。自分の持ち場に土足で上がられることを一番嫌う。まあ元より性格真反対のようやし、よりが合わんのやろ」
「大丈夫かなあ、トビやん」
「あの手のギスギスは、不規則かつ不明瞭な非科学反応の畜積によるものだ。早い話が落雷や竜巻よりも予測不能。まあ逆にライバル心に火がついて相乗効果で飛躍するって可能性もあるし、ひとまずは経過観察しようや」
「何とポジティブ」
「それよりもまず俺達はバディとして、互いのスキルをあげて行くことに集中しよか」
そう言い、チキンを完全に腹に収めたトビやんは、文鳥をおうちに戻してから、
「師匠、お願いします!」
と叫んだのだった。
「うむ。山野かなたとやら、はじめましてである」
いきなり画面が真っ黒になったかと思えば、次に映りこんだのは2つのくりくりっとした目玉。
対象物が引くと、そこに映っていたのは…。
「すごい!フクロウのロボット!」
「ムキー!ロボットではない!れっきとしたナマフクロウである!」
「え?」
フクロウが喋っている?
インコ等は聞いたことがあるけど、フクロウ?
かなたの頭が夢と現実の合間でうろうろする,さらにその不思議な猛禽類は名乗った。
「ワシの名前はワットワーズ!数々のしりとりファイター達を鍛え、育て上げた伝説のコーチなのだ!」
「あ、そっかバーチャル」
「映像でも幻でも蜃気楼でもない!」
「まあまあ、師匠」
見かねたトビやんが、1人と1羽の間に入ってきた。
「無理もない。かなたはこんなにも優秀で他に類を見ないフクロウを見たことがないのです」
しかし言われたワットワーズの方はまだぷんすかしているらしく、
「よろしい。ではここでこの鳥類と一戦あいまみえようぞ」
「え」
まさかフクロウと人間の自分がファイト?
流石に少年、苦笑う。
いくら子どもでも、こちとら脳みそはそれなりに詰まっているのだ。
侮ってもらっちゃあ困ると。
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