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パチパチパチ
気がつけば拍手をしてしまっていた。
「すごい、そんなやり方があったなんて!」
「まあ一度はその生き物を図鑑などで見ておく必要はあるが、いざという時の隠し玉として、2、3匹押さえておけば助かるぞ」
ハッピを脱ぎながらフクロウ,続いてトビやんもカツラをはずしながら言う。
「これらはサイエンスファイトの初心者がよくやるトレーニングやけど、ノーマルでも変わらへん。さっきみたいに、もう何も出てこない!っていう状況の時、次の一歩を繋げていける鍵は想像力や!その翼広げて、思い巡らせれば言葉はきっと頭に浮かんでくる!」
「よっし、何だか自信が持ててきた!おおきに、ワットワーズ,トビやん」
「うむ、これからよろしく頼むぞ、かなた!」
ようやくフクロウ博士も気嫌を直してくれたようだ。
改めて少年と向き合い、画面越しにグー・羽タッチを交わしたのだった。
ワットワーズは流石トビやんに慕われるだけあって、その後のトレーニングでも、いろいろな気づきをかなたにも与えてくれた。
「無理な仕掛けをすると、自分がワナにはまるぞ。急がば回れ,敬遠する時と勝負する時はきっちり分けるのだ」
「ルールを制する者は、天下を制すという。それぞれのファイトには細かな決まり事がある。つまらないミスで失格にならないよう、しっかり頭に入れておきなさい」
時々ドラマに出てくるお姑のように小言するので、わずらわしいと思う時もあるが、彼の指導は経験の積み重ねから出たうま味である。
かなたはそのうま味をタダで飲ませてもらっているのだから、どれほどその時は説法を右から左へ流しても、後でしっかり反省し、復習をしていくのであった。
おかげで、
「トウキョウサンショウウオ!」
「はあ?また生き物?!」
「知ってる、みあ?地名がついたサンショウウオって多いんだよ。他にもハコネサンショウウオとか、トウホク、ホクリク、ツシマ…」
「……」
かなたの言葉の領域が確実に広くなったことを感じとったみあが、次第に危機感を覚え会議に復帰。
一方トビやんの方も経過観察と言いつつも何かしら声かけしてくれたのかもしれない,リーダーの遥が復帰したのは、全国大会が開催される4日前のことだった。
ワットワーズが笑顔でうなずく。
「これで全員そろったようだな」
「ま、まあね。結局チーム戦やから、うちとかなたが勝っても、他のクラスで負けたら日本一にはなられへんわけやし」
と、みあ。
「せやな。足ひっぱりあったところで、得するんはよそさんのチームだけやわ。ここは気い乗らないけど、協力して差し上げてもよろしいわ」
と、遥。
相変わらず、どちらもにこりともしないが、これまでに比べれば雰囲気は悪くない。かなたにはその能面が、何となく照れ隠ししているような感じにも思えた。
チキン野郎も2人の顔を交互に見ては、いつものように笑う。
「んじゃ、これで大会前最後の8時の集会は閉じようか。俺は良質な睡眠を得るため、入眠開始予定時間の最低1時間前からは、全てのネットワークを遮断するようにしてるんや」
「うん、俺も眠いや。じゃあ皆、次は現地で会おうね」
「寝る子は育つや、ええ夢みいや」
「お休みやす」
画面がブラックアウトする。
自分の成長を感じられたこと,また4人全員が顔を揃えられたことに、かなたは嬉しさで胸がいっぱいであった。
ようやく全国が楽しみになってきた!
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