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何とも挑戦的な挨拶を叩きつけたこの少年、実はかなたの一つ下の小学4年生で名を田中友也という。生まれつき身体の一部がうまく動かせないため、バスで遠くの特別支援学校に通っている,いわば学校の離れた親友兼ライバルといったところだ。
2人の出会いは丁度、半年前に遡る。
きっかけはかなたの母・まりかだった。
偶然にも雨宿りのためここへ避難してきた友也が、介助役の大学生をしりとりで負かしているのを見かけ、また偶然にも図書室内で世界地図帳にうつつを抜かしていたかなたを呼び寄せたのである。
最初の結果は引き分けだった。
だが他の同級生とやれば、できて15分そこらで相手が言葉につまるところ、彼等はファイト開始から公民館閉館までの約1時間を裕に言葉で繋ぎ、双方手応えを得た次第である。
そして友也とはその後2度も対戦したものの、今だに勝敗はついていなかった。
彼の頭の回転は速く、言葉が思いついた即座に足指を使ってはキーボードを叩いて入力,パソコンのスピーカーを通してぱっと返してくる。
対するかなたは、図書室の辞典から言葉をかき集めて作った例のしりとりノートを武器に応戦だ,今日こそ決着を…
「行くぞ、友也!」
「望むところだ、かなた!」
かくして見た目は静かな、しかし熱い「しりとりファイト」が小さな公民館の端で火ぶたを切った!
おそらく誰もが1度はやったことがあるだろう“しりとり”。
「尻」を「取る」ということで名前は若干ストレートだが、今やこれは「しりとりファイト」という正式なスポーツ競技として成立していた。競技者は皆「しりとりファイター」と呼ばれ、この町や古墳を超えた先には、全国津々浦々にライバル達がいるという。
この話は、奈良のしりとり好きの少年・山野かなたが、しりとりファイターとなって成長していく物語である!
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