12人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
#魔界#
爆発音と悲鳴が町中に響き渡る。
黒煙に紛れるように町人たちは急いで逃げている。
数日前、突如として魔界に数人の黒ずくめの人間がどこからともなく潜入した。
次々と田舎町を襲うだけ襲って、虐殺を繰り返していた。
「クッ...!!」
何者かが壁に打ち付けられる。
カランカランと炎のハートが入った鳥籠が石畳の道に転がった。
この鳥籠は彼の今持っている唯一の武器である。
彼は苦しそうによろけながら起き上がった。
(私が…私が、捕縛しなければ‥!!この街にまともに戦えるのは私しかいない...!!)
彼の頭部が揺らいでいる。
彼は人間ではなく、大まかに人外と言われる種族である。
彼の体の一部・包帯が巻かれた両手がふわっと浮かび上がる。
右手ですぐに鳥籠を拾い、迫り来る黒ずくめの者達を睨み付ける。
「この街から出ていきなさい。さもなくば、私があなたたちを捕縛します...!!!」
カランッと鳥籠を見せる。
彼は援護系の魔法が得意で、戦いにおいてほぼ前線で戦ったことはない。
しかし、今戦えるのは残念ながら彼しかいないのだ。
ハッ、と黒ずくめの一人が彼を鼻で笑う。
声からして男であることがわかる。
「貴様のような『人形』が、我々に敵うはずがないだろう?」
「やらなければわからないでしょう…!!!」
黒ずくめの人達が見下すように彼を嘲笑う。
だが、彼はそんなことを気にもせず、魔導書に左手をかざす。
「【火光】!」
彼の持つ鳥籠から無数の黒い火の玉が飛び出して攻撃する。
しかし、火の玉は無残にも振り払われてしまった。
「こんなものですか…」と黒ずくめの一人が呟く。
こちらは声からして女であることがわかる。
「人形の分際で…我々の道を妨げるな」
最初の男が彼に向けて光の魔法を放つ。
その男の青い目は、憎悪に満ちていた。
彼の視界が次第に黒く塗りつぶされていった。
それはもちろん電気が消えた訳ではなく、彼が気を失ったからであった。
最初のコメントを投稿しよう!