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【結】ラストシーン
帰り道、自転車を押しながら坂道を下ってゆく。
あの後、喜喜の亡骸は園内の大芝生広場の中央に埋葬され、本物と同じ石碑がその真上に置かれた。
園内では葬儀が執り行われ、何社ものテレビ局が取材に訪れた。その様子が報道されると、全国から彼を弔う言葉や寄付が寄せられた。
有賀園長は園内に新設される喜喜記念館の館長として働き続けることを提案してくれたが、今の私には後々の身の振り方を考えられるほどの余裕などなかった。
いずれは彼の死を乗り越えて気持ちを切り替え、未来に向かって歩き出さなければならない。
今走り出せば、すぐにでも新しい道が切り開けるかもしれないという気もしていた。
それでも今は、もう少しこうやって立ち止まったまま哀しみに暮れていたかった。
「ありがとう、喜喜」
見上げれば、プラネタリウムのような満点の夜空がどこまでも広がっている。
きらきらに光る星々の中の一つが際立って明るく見え、私はそれがきっと喜喜で地上にエールを送ってくれているのだと直感した。
〆
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