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「昴さんこそ気安く俺の名前呼ばないで欲しいですね。凛さんだって俺のこと名前で呼んでくれたことないのに」
――……っ、あっはっはっはっはっはっはっは、そうなんだ!? そっかごめんね! 一心くんの「はじめて」凛より先にもらっちゃったんだ、俺が。
(しまったあああああ、というか、うっぜえええええ)
失言したのは自分だが、どんな球も確実に拾って打ち返してくるところに「してやられた」感がある。うざいけど変に痛気持ち良くてむずがゆい。
以心伝心でもないだろうが、スマホから楽し気な声が聞こえてくる。
――いま、結構気持ち良いよ。一心くん、思ったより可愛い。年下男子ってあざといなぁ。
スマホを耳から離して、一瞬睨みつけてから、時任もまた言い返した。
「お言葉ですけどね。凛さんと俺が結婚したら、昴さん俺の義弟ですから。年上でも弟ですから、それはもう可愛がってあげますよ。楽しみだなぁ」
もはや自分でも何を言っているかわからないが、負けてなるものかと言い返していた。
――なるほどね。だいたいわかった。来週にも会おうよ。本当に会いたいんだ。凛抜きで、二人でね。すっごく興味がある。
その言葉を最後に電話が切れた。
スマホを握りしめたまま、時任は「ふ、ふふ」と笑い声を漏らしてしまった。
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