523人が本棚に入れています
本棚に追加
/114ページ
なんだろうと思ったら、目元に苦笑を滲ませた時任が何かを観念したかのように白状した。
「帰してから、『家に無事につきました?』なんて連絡がてら聞くべきでした。今聞いてしまうと……、帰したくなくなります」
いや、でも私は大人なので。
帰さないと言われても帰るときは帰ります。
言うべき言葉は頭の中にあったし、言おうと思えば言えそうだったのに、どうしても喉から出てこなかった。
あまりにも居心地が良すぎて。
帰りたくないと、もう、思ってしまっている。
(帰らないとしたら……どうする?)
時任が、待っている。
思い切るには少し心が弱すぎて、結論を先延ばしに、逃げた。
「その……、お酒を飲んでもっとゆっくり話してみてから、結論づけましょうか」
最初のコメントを投稿しよう!