【本編1-4】朝まで

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「言い分としてずるいのは承知の上ですが、こうしないと思い切りがつかなくて、ですね。でも、飲む前から気持ちは固まっていたので、大丈夫です。同意の上です」 「……安心しました」  安堵に満ちたような柔らかな声はとても近く。  息をつくより先に、後ろから上半身を傾けてきた時任に、唇に唇を重ねられていた。 * * *  部屋にたどりつく前に、服は全部脱がされてしまっていた。 「シャワーだけ、一緒にしましょう」  と、押し切られて「恥ずかしいから電気つけないでください」と「危ないと思います」の押し問答の末、廊下の灯りをつけて浴室に入り、薄暗がりの中で触れあいながら全身を湯と湯気であたためた。  時任は先に出て行き、凛はタオルで身体を拭いてから、迷った末にそのタオルを巻き付けて部屋に向かった。視線を滑らすと間接照明の灯りもぎりぎり届かない暗がりに布団が一組置かれていた。 「ロフト……」  上から持ってきたのかなと言おうとしたが、手を掴まれて引きずり込まれてしまう。身につけていたタオルはあっけなく落ちた。  柔らかな布団に横たえられながら、ラフなTシャツを着こんでいた時任に見下ろされる体勢で「上に行くと、明日、降りる時に大変かもしれないので」とひそやかに告げられて、思わず顔を手で覆った。 (そんなに……) 「怖いとか、嫌なことは言ってくださいね。まだ、聞こえてますから」  すでに、少し怖いことを言っているような気がするし。 「実は、あんまり、勝手がわかってなくて」
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