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身体のサイズにはてんで合わないそれを、凛が着ているのが何故か嬉しいらしい時任がやけにニコニコと見てくる。
正直、ニヤつき過ぎだと思う。
(この人で良かったのかな)
心の中でぼやいてはみるものの、答えは自分が一番よく知っている。
あの雨の日に、怖いくらいに落ちてしまった。
その感覚が今でもずっと続いていることを。
「凛さん、朝ごはん用意しますけど、座って待っててくださいね。コーヒー先にいれますか?」
「ありがとうございます」
立ち歩くのはまだ辛いと素直にお願いしたら、時任はまだニコニコとしていた。
「何か」
「パーカー大きいなと思って。それだけ大きかったらジャージ脱いでも良いんじゃないですか。その方が……」
凛の視線に気づいて時任は一度口をつぐんだが「その方が?」と促されて素直になることにしたらしい。
「可愛いと思います……!」
凛は時任の頬に手を伸ばして触れながら、静かに言った。
「たしかにわたしはあなたが好きですが、そんなにマッハで変態になられてもついていけません」
「ついてきてくれる気があったんですか……!?」
「お付き合いする以上は……」
多少相手に合わせることも。
そのつもりで言いかけたが、時任の嬉しそうな顔を見て口をつぐむ。
今はまだ、これ以上この男に隙を見せてはならないと何故か強く思った。
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