【本編2-6】疑惑のキスマークと、彼氏の嫉妬

3/4

522人が本棚に入れています
本棚に追加
/114ページ
 そのとき、メッセージが入っていることに気付いた。  ――昨日、弟と食事って言っていましたよね。いま、社内で「凛さんの彼氏」を見たって噂が出回っているんですが。弟らしいですよって言おうと思ったんですけど、「なんで知っているの?」と聞かれてしまうと思うので、ひとまず口出しはしていません。 (時任くん……!!)  まさかそんな速さで「彼氏の噂」が出回るとは、恐るべし。今までそういう話題に縁遠かったせいで面白おかしく伝わってしまっているのか。或いは、市川に昴を隠し撮りされていた可能性にまで思い当たってしまった。  違う、誤解だって、と返信を入れようとしたところでさらに追加のメッセージがくる。  ――弟なんですよね? すごいイケメンだって話なんですが。  心なしか、メッセージからひんやりとした空気が漂ってきた。  怒っている気配をひしひしと感じる。おそらく、気のせいではない。 (みんなに秘密にしているせいで、彼氏だと名乗り出ることもできないし。というか完全に昴が私の彼氏だと誤解されている現状、時任くんからしたら、「何をしていてそんなことになるんだ」くらいのことは思ってるよね……!!)  ただ食事していただけだし、何もやましいことはない。正真正銘の弟だし、紹介するのもやぶさかではない。  ひとまず怒りをおさめてもらわねばと、凛はメッセージを考えるものの。  はっと首筋に手をあてる。  彼氏という誤解が広まっている中、謎の鬱血。目にした全員がキスマークと思っても不思議はない痕。 (違うんだけど……、これ、どう言い訳するの……?)  スマホを手にしたまま、凛は身動きを止めて考え込んでしまった。
/114ページ

最初のコメントを投稿しよう!

522人が本棚に入れています
本棚に追加