【本編2-7】言い訳できない

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【本編2-7】言い訳できない

 ――凛さん、いまどこですか?  既読にしてしまったメッセージを前に、凛はしばらく固まっていた。 (なんて返そう。できれば直接話したいけど、キスマークもどきのことを説明してから顔を合わせないと、話し合うどころじゃないかも……)  悩みながらスマホに指を置いたそのとき、トイレの入り口の方から人の足音が近づいてきた。  凛は咄嗟にバッグをひっつかんで個室に飛び込み、鍵をする。  今はひとに会いたくない。  とにかく、このキスマークらしきものが問題なのだ。  知り合いなら挨拶程度の会話は発生するし、首の痕にも気付かれる。その場では話題にならなくても、後から彼氏の噂が耳に届けば「なるほど~」なんて思われてしまうに違いない。未然に防ぐためには「彼氏の噂があるけど、弟だからねっ」と先手を……。  とはいえ。 (この謎の痕がある限り、「弟にキスマークつけられるわけないよね? 下手な言い訳はやめたら?」って思われる……っ!!)  言い訳すれば藪蛇からの泥沼。  放置しておけば完全に昴=彼氏で確定となる。  社内恋愛をしようなどと考えたことがなかった今までなら、「仕方ない」で済ませた。人の噂も七十五日、いずれみんな忘れるはずだ、と。  しかしいまは状況が違う。  本物の彼氏が社内にいるのだ。  このまま昴の噂を一人歩きさせてしまえば、時任は彼氏として名乗り出ることもできない。どこかで誰かに知られたとしても、時任の方が二股をかけられた男と嘲笑されるだけかもしれない。 (キスマークも「彼氏の噂(本当は弟)」も消せないのなら、せめて昨日時任さんと一緒にいたアリバイが偽装できれば、周りには言い訳がたつかな……?)
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