【本編2-7】言い訳できない

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 そして時任には誠心誠意謝って、昴も紹介し、すべては誤解なのだと納得してもらうしかない。  凛は個室の中で、スマホを素早く操作した。  ――いま、会社にはついていますが、フロアまで行けてません。ところで時任さんは昨日何をしていましたか? 私と一緒にいたことにはできますか?  考えたままに文字を打ってから、返事を待つ。  既読にはなったものの、なかなかメッセージはこない。  手がふさがってしまって、私用でのスマホ操作は難しい状況だろうか? とぼんやりと考えていたところで、メッセージが浮かび上がった。  ――それはどういう意味ですか? (そ……、そうだよね!! いきなりアリバイ工作頼まれてもわけがわからないよね!!)  むしろ余計怪しい、と思いながら凛は慌ててメッセージを打つ。  ――昨日一緒にいたのは弟で間違いないです。レストランで食事をしているときに会社の人に会って、わざわざ弟だと言わなかったので勘違いされたと思います。帰りは、私が少し酔っていたので、弟が家まで送ってくれました。遅い時間だったので、弟はそのまま家に泊まり、朝になってから帰りました。  既読にはなるものの、返事はない。凛はそのままメッセージを入力した。  ――特にやましいこともないんですが……。首に変な痣みたいな痕があって。たぶんどこかにぶつけたんだと思いますけど、見ようによってはキスマークに見えます。気付いた相手が話題にしてくれたら言い訳もできるんですが、遠巻きに見てキスマークだと決めつけられると、昨日の「弟が彼氏に誤認された件」もありますし、どうしたものかと……。  正直に状況を伝えたのだが、返事はない。  しばらく待つも、動きはなく。個室の外の人の気配も消えた。
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