【本編2-7】言い訳できない

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 意を決して、いっそ電話をしようとしたところで、スマホが震えて着信を伝えて来た。時任から。 「は、はい」  いつ誰がトイレに来るかもしれないので、声を潜めて通話にする。  ――凛さん、今日、凛さん休みにしました。出社しなくていいですから、そのまま会社を出てください。俺も都合付けて出ますから、外で会いましょう。 「休みにした!? どうやっ」  ――時間が無いので、その辺は後で。とにかく、こちらはなんとかしますから。こんな時の為にうちの鍵渡しておけば良かったですね。  というのは、時任の部屋で落ち合いたかったという意味なのだろうか。  たしかに、面倒な話になるだろうし、どこかの店でというよりは落ち着いて話せる場所が良い。  凛は思い余って、自分の方から提案してみることにした。 「もし良ければ、うちに来る? あの、明日土曜日だし。ゆっくり話せたらいいかなって……」  しん、とスマホの向こうが沈黙する。 (あれ……?) 「時任さん……?」  こそっと名前を囁くように呼んだところで、低い声が答えた。  ――わかりました。あとで家の住所送ってください、見ればわかると思います。迷ったら連絡します。午後には会社を出て、なるべく早くそちらに向かうようにします。 「うん。ところで、私の欠勤事由とか聞いてもいい? 時任さんどうやって」  ――あとで説明します、大丈夫ですから家で待っててください。俺の方こそ色々聞きたいところなんですが。弟と過ごしてどうして彼氏だと噂になったり、キスマークができるのか。いま、全然納得していないので。一晩かけてじっくり身体(からだ)に聞けばいいですか?  声が真剣だった。  何言っているの、と笑い飛ばせない空気。
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