【本編2-8】彼氏来襲

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【本編2-8】彼氏来襲

 結局、何をする気にもなれなくて、平日の真昼間に家に帰りついてしまった。 (会社さぼった……)  時任が何かうまいこと言ってくれたようだし、首の痣のようなものも気になる以上、休めたこと自体は良かった。さすがに土日を越えれば痣は目立たなくなるはず。  ただ、これまでこんな形で会社を休んだこともなかったし、自分の判断ではなく連絡も時任任せということが気にかかって仕方ない。  仕方ないはずなのに、ぼんやりとしている。  入社以来ずーっと張りつめていたものが、ぷつんと途切れた感覚。  自分はこんな無責任な人間じゃないはずなのに、という微かな苛立ちと。  今まで何を思いつめていたんだろう、という謎の解放感。  思った以上に早く広範囲に拡散したらしい噂。  言い訳の必要な痣。  精神的に消耗しながらも、立ち向かわねばならないと思っていた矢先の出来事。 (会社って休んでいいんだ……)  しみじみと思いながら、家に帰りつく。  スーツを脱いで、白いフリルのTシャツに、デニムのホットパンツに着替えた。外に出ようと思えばぎりぎり出られなくもない服装だが、露出が多いのが苦手な凛にとっては部屋着の範疇。  そのまま、水回りの掃除をし、部屋に掃除機をかける。ベッド、パソコンデスク、ローテーブル、チェストとワードローブ。一般的な一人暮らしの部屋といったインテリアで、全部ホワイトカラーでまとめている。カーテンは、ミラーレースと、外から見たときに女性の部屋らしくないようにと選んだ濃紺の遮光。星空の柄で、蓄光タイプ。  ベッドに座ってぼんやりとし、無為に時間を過ごす。それから、唐突に思い出した。
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