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「ええっ、何言ってるの。そんなことあるわけないじゃないっ」
(この普通じゃない嫉妬は、何かを疑っているとは思っていたけどっ)
手足をばたつかせると、腕が外れた。
飛び出すように逃れてから、振り返る。
「昴は双子の弟! 今度紹介します!! 昨日はずっと一緒だったけど、それは私が酔ったから家まで送ってくれただけで、かえって安全なくらいだよ。いくら時任さんでも、弟を疑うのはやめて。確かに彼は見た目は良いし、女の子にも昔からずっとモテていたけど……。私の弟だから。そんないい加減なひとでもないし」
最後の一言は少し余計だったかもしれない。
(「私の弟だから」って言っても、別の人間だし。私自身、昨日昴にひどいこと言った。遊んでる、みたいな……)
昴のことを信じたいとは思っているが、離れて暮らしているし、すべてを知っているわけではない。
底の知れなさもあれば、キスマークの謎も確かにある。だが、やはり身内の欲目、時任に疑われればかばいたくもなってしまうのだ。
「首の痕のことはわからないけど、あとはもうどこを調べてくれてもいいから! やましいところもないし……」
目を細めて聞いていた時任が、ふっと笑みを浮かべた。
瞬間、ぞくりと背筋が粟立った。
「そう、ですね。全身くまなく調べて、言い訳ができないところにキスマークがないか確認した方が良さそうです。どうあっても、俺以外の男がこの部屋で一晩過ごした事実は消えませんから。凛さん、知っていますか?」
時任が一歩距離を詰めてきて、凛は後退りかけたが、なんとか堪えた。
「何をですか……?」
かすれ声で聞くと、時任の右手に頬を包み込まれ、顎を持ち上げられる。
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