【本編2-11】加虐願望と被虐趣味

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 言いながら、続けてもう一方の胸にも唇を寄せてきゅうっと吸い付く。 「はあ、もう、そんなに痛くしないで」 「『そんなに痛くしないで』? もっとして、じゃないですか。凛さんみたいに真面目に生きてきた人は自分を抑え込みすぎなんですよ。セックスのときくらい、頭空っぽにして馬鹿になってください。全身を性感帯にして、声が枯れるまで喘いでいれば良いんです。気持ち良いでしょう?」  時任は身体を起こすと、ゆるゆると抽送しながら、縛り上げた手首を両手で掴んで、見下ろしてくる。  その目はいつも通りの優しさに満ちていて、凛は思わず目を閉じてしまった。 (もう……、変態のくせに)  本当に嫌なことはしてこないし、本気で怖がる一歩手前で全部セーブしてくれている。  気持ち良い反応を見ながら加減してくれているらしいのが、嬉しいような、恐ろしいような。  やろうと思えば、もっとひどいことも出来てしまうのではないかと。  それこそ、普段彼がしているという凌辱妄想のように。 「気持ち良い、です、けど」  素直になりきれずに凛がそう告げると、ふふっと笑われてしまう。 「けど、は余計です。まだまだ理性残しているなら、恥ずかしいこといっぱい言わせますよ。そうですね、弟さん凛さんにご執心みたいだし、この部屋盗聴器くらいあるんじゃないですか? いっぱい聞かせてあげましょうよ、凛さんのイキ声。……もしかしたら盗撮もされていたりして」 「そんな。やめてください。あっ、あっ、や」  ふざけないでとやり返そうとしたら、手は拘束されていて。  時任は再び腰を激しく打ち付けてきて、それは二人が同時に絶頂を迎えるまで続けられた。  * * *  二人でシャワーを浴びて、洗濯機を回して、部屋に西日が差し込む頃。
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