【本編2-11】加虐願望と被虐趣味

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 スマホが着信を伝えて、凛は床に座ってベッドに寄りかかったまま、ぼんやりと発信者の名前を見つめる。  佐伯昴 (どうしたんだろう、忘れ物、とか……?)  電話を取るのに躊躇いがあったのは、先程の時任の言葉攻めのせいだけではなく首筋に残る痕のせい。  時任にはどう見てもキスマークと言われてしまったし、凛もその可能性は否定しきれない。しかし理由がわからない。  まさか、よりにもよって嫉妬のはずがない思うものの。  彼氏がいると告げたときの昴の冷たい態度を思い出すと、やや自信がなくなってきてしまう。 「凛さん?」  キッチンで、食べ損ねたお昼と兼用の晩御飯の準備をしていた時任が、部屋に顔を出す。  手土産にした食材ついでに量販店で買ってきていたTシャツとハーフパンツにエプロン姿で。 「スマホ鳴ってません?」  そう言いながら、不審に思ったように歩み寄ってきて、「失礼」と断ってから手元を覗き込んだ。 「昴から……」 「それ、俺が出ていいですか」 「え、それはさすがにびっくりすると思う」  そういうわけにはいかない、と思ったところでさっと時任にスマホを奪われた。 「いずれは挨拶するわけですから。それが今になっただけで。――はい。こんにちは。初めまして時任と申します」  通話にしながら、大丈夫です、というように目配せをくれて時任は話し始めたが。  ちらりと凛に視線をくれてから、スマホを離して言った。 「すみません。ちょっとベランダに出て話します」
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