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自分で言ってみて、そうだろうか、と自問する。
絶対無いとは言い切れない。凛がどういう親のもとで、どういう育ちをしているのか、これまで深く聞いたことはなかった。双子の弟のことさえも。
いずれという思いはあったが、あまりに急かして結婚を意識させすぎても、重いかもしれない、と。変に遠慮していたのはある。
――引っ掻き回しているつもりはなかったけど、そう感じたなら謝るよ。俺は事実を言っているだけ。ま、会ってみればわかるはず。俺と凛、全然似てないから。
電話の向こうの相手は爽やかに言い切ってから、「それじゃあ、またね」と言って通話を終えた。
時任は、沈む夕日の中、ブラックアウトした凛のスマホを握りしめて立ち尽くしてしまった。
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