【本編1-2】戦略的ダメ男

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 二人とも見た目もいいし仕事もできるし、独身の女の子たちに人気があるのは知っている。だが、仕事上の会話はよくするがプライベートには踏み込まないので交際関係はよくわからない。自分が鈍いせいもあるとは思っているのだが、少なくともそんな話をする間柄ではない。 「というか、さすが人間関係に詳しい? 確かにあの二人は仕事でも成果だしてるからね。将来社長の片腕、なんて」 「それを言うなら佐伯さんも普通にやり手ですよね。俺、異動になったら佐伯さんの下につきたいと思っているんですけど」  思いがけないことをさらりと言われて、凛は目を見開く。 「私?」 「俺の上司になると、結構俺に、というか親に気を遣うみたいなんですけど。佐伯さんはあんまり気にしなさそう。さっき、俺の名前出て来なくて考えていたくらいだし」  バレてる。  そんなに不自然な間をあけたつもりはなく、一瞬だったはずなのだが、考えて思い出したのが、はっきり悟られていた。鋭い。 「私の下かぁ……」  そこまで見込まれていたというのは正直意外だった。名前と顔が一致して覚えられていただけでもすごいなと思ってしまっていたのに。 「雨弱くなってきましたね。一番ひどい時間帯に出歩いちゃったみたいですよ」  時任はくすっと嫌味のない笑い声を立てた。  滑るような運転で、車は駐車場に入っていく。  タワーマンションなどではなく、ごく普通の単身者用のマンションに見えた。 (もしかしてこのひと、会社では普通の平社員スタートだけど、自分の給料だけでやりくりしているのかな)
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