【本編3-5】恋人の弟

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「今の関係っていうのかな、一緒に食事していても無関係ですよね、俺と昴さん。初対面で、同僚でも友人でもないですし。将来的には関係があるつもりですが、まだ確定じゃない。だけどこうして出会ったわけなので、『凛さんと仲を深めたら自動的についてくるひと』じゃなくて、積極的に仲良くなりたいと真剣に考えています」 「へえ。俺はそれ、必要があるとは思えないけど」  試すようなまなざしを向けてから、グラスを傾けて口を近づける。  少しだけ、その口元に笑みが浮かんだように見えた。 「それは今日この場から少しずつです。この関係は必要とか必然だったと思ってもらえるように誠心誠意つとめていきたいと思います。昴さんは、俺が凛さんと結ばれたら自動的に義弟になりますが、自分たちの間柄が『兄弟』と呼べるものではないことは本人同士一番わかっている状態だと思います。だけど、俺はそこからきちんと『義兄弟』になりたいです。そうじゃないと、俺のいないときに昴さんと凛さんが会うと聞いて、いちいち『他の男と!』って警戒しないといけないじゃないですか。嫌ですよそんなの。昴さんは弟ですよ。お・と・う・と!」  グラスをテーブルに戻した昴は、時任に顔を向けて、ふきだした。 「分をわきまえろ、と言っているように聞こえる。彼氏様?」  それまで頑なだった表情が、少しだけ寛いで、柔らかくなったように感じた。  その笑顔を見て、(これはモテる)と確信しつつ、時任は慎重に言葉を選んで告げた。
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