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「いらっしゃいませ」
ネカフェの自動ドアを潜ると、女の店員さんが声を掛けて来た。
で、この店で働いているこの店員さんが、僕はすごく好きだ。
でも爽やかに『来ちゃいました』なんて返せないから、軽く会釈だけする。
「お一人様ですか?」
「はい」
(まぁ、今まで一人じゃなかった時なんてないけどね)
「ではゲームはなさいますか?」
「いえ、やりません」
(そんなんやってたら、注文届いた時に君の顔見れないし)
「タバコはお吸いになられますか?」
「いえ、吸いません」
(そんなのにお金を使うなら、ポテト注文します)
「ではオープン席か、個室のリクライニングかフラットどちらにしますか?」
「空いてるなら、個室のフラットで」
お決まりのやり取りを済ませて、伝票を貰い、指定された席へ行く。
リュック型のカバンを下ろし、中からパソコンとノート、筆記用具を出す。
(今日の彼女は機嫌が良さそうだったな)
書くための準備が整うと、受付にいた彼女の姿を思い出す。
僕がネカフェに来る理由の半分は、彼女の顔が見たいからだと言っても過言
ではない。というか、今ではほぼ100%彼女が目的で来てる。
勿論、こんなことは人には言えない。普通に気持ち悪いからね。
当然、自分の心の声が気持ち悪いのも分かってる。
(さて、いい日のようだし小腹も減ってるし、何か頼もうかな)
備え付けのパソコンから、ポテトと唐揚げのセットを頼んだ。
(腹もちがいいから、結局、芋と鶏になっちゃうな。油万歳だ。
で、えと、マヨネーズはいりません、と。
…………さて、飲み物でも取りに行くか)
そして、ドリンクバーに行くついでに、資料にすべく漫画や雑誌も取りに行
く。
今では、目的のほぼ100%が彼女に会う為にネカフェに来ているとはいえ、
書くために来ているのも嘘じゃない。
資料として使う為に、漫画は今一番売れているものを5、6冊。雑誌は漫画
系と文芸系のものを一つずつ手に取り籠に入れる。
それらも、原作が小説やライトノベルのものを中心に選ぶ。
(相変わらずカッコイイなこの人は)
そんな感じで雑誌コーナーにいると、受付に客がいないのか、返却棚に溜
まったコミックを彼女が片付け始めた。
彼女は特段仕事が出来るとか、特別可愛いとか綺麗ってわけでもない。
だけど、彼女を見ると勇気が湧く。
僕にとってはどんな人より彼女はカッコイイし、ヒーローだ。
だから、僕は彼女に会いに来るのだ。
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