二人の間を隔てるものは……

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 ――それからわたしたちは、都内の桜スポットをあちこち見て回った。  途中のカジュアルなイタリアンレストランでランチにして(「わたしがご馳走する」と言ったけれど彼が拒んだので割り勘になった)、桜並木を歩きながら写真を撮って……。  ちょうどお花見シーズンで、土曜日だったこともあってどこも人でごった返していたけれど。わたしたちも屋台グルメを楽しんだり、近くにあったカフェでスイーツを食べたりして(思い返せば、わたしたち食べてばっかりだ)楽しい時間を過ごすことができたと思う。  日が暮れかけて薄暗くなってきた頃、どちらからともなくそろそろ帰ろうかということになった。 「――絢乃さん。夕方になってちょっと冷えてきましたけど、寒くないですか?」  帰りの車の中で、彼が心配そうに訊ねてきた。 「もう春になったから」と車内のヒーターは切られていて、わたしがジャケットの下に着ていたのが透け感のあるトップスだったからだろうか。 「ううん、大丈夫。心配してくれてありがと。――今日は楽しかったね。写真もいっぱい撮れたし。この写真、里歩に送ってもいい?」 「はい、いいですよ。その代わり――」 「〝SNSには載せないように釘を刺せ〟でしょ? 大丈夫よぉ、里歩はそんなことするようなコじゃないもん。――ハイ、送信完了っと♪」  わたしは写真に簡単なコメントをつけて、メッセージアプリで彼女に送信した。 「あ、返事来た☆ 『どれもいい写真だね』だって」 「それはよかったです。……そういえば、ネックレスの写真は送って差し上げなくていいんですか? というか撮ってませんでしたよね」 「………あ、忘れてた! そうだ、どこかで車止めて貢が撮ってよ」  わたしはプレゼントをもらったことに満足しすぎて、里歩に送るための写真を撮ることをすっかり失念していたのだ。……そもそも、わたしは元々自撮りがそんなに得意ではないので、最初から彼に撮影してもらうことをアテにしていたのだけれど。 「別にいいですけど……。さては絢乃さん、最初から僕に撮ってもらうつもりだったんですね?」 「あら、バレてたか」  彼には思いっきりバレバレだったので、わたしはバツが悪くなってペロッと舌を出した。 「わたし、実は自撮り苦手で……。お願いできる?」  わたしは可愛く小首を傾げて彼におねだりしてみた。 「絢乃さん、そうやって何でも可愛くおねだりしたら、僕がやってくれると思わないで下さいね? ……まあ、撮らせてもらいますけど」  彼はぶつくさ文句を言いながらも、わたしからスマホを受け取った。 ……結局やるんだ。そういうところが彼の〝お人好し〟たる所以(ゆえん)なのかもしれない。だからわたしも、ついつい彼に甘えたくなってしまうのだ。
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