雨降れば……

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 ――彼がわたしにプロポーズをしてくれたのは、すごくベタだけれどクリスマスイヴの夜。ライトアップされたお台場のクリスマスツリーの前でだった。  会社が終わってから彼の愛車でレインボーを渡り、オシャレなお店で二人で食事をして……。大きなツリーを見上げながらロマンチックな雰囲気に浸っていた時。 「絢乃さん、やっと覚悟が決まりました。僕をあなたのお婿さんにして下さい!」  小さなダイヤモンドのはめ込まれたプラチナリングをわたしに差し出しながら、彼が真剣な眼差しでそう言ってくれたのだ。  そのエンゲージリングは彼にしてみればかなり高価なものだっただろう。それを躊躇なく購入したことに、彼の本気を見たような気がした。 「はい、喜んで!」  わたしは満面の笑みで彼の胸に飛び込んだ。  リングはわたしの左手薬指にピッタリで、どうして伝えてもいないのにサイズを知っているのか訊ねたところ、母から教えてもらったのだと言った。  年明けの一月三日に父の喪が明け、三月半ばの卒業式には貢も来てくれた。母ともども有休を取って来てくれたらしい。  ――そして結婚準備も着々と進み、わたしたちは今日という晴れの日を迎えた。
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