エピローグ ~永遠の愛~

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 結婚式でも新郎新婦の宣誓はするけれど、わたしたち二人だけで一足先に夫婦としての誓いを立てた。  わたしの父と母、そして貢のご両親がそうであるように。わたしたち二人もそんな夫婦であり続けたい。……まあ、未亡人である母はこの先再婚の可能性もあるわけだけれど。  〝夫婦〟といえば、悠さんは今年一月授かり婚をしたそうだ。お相手は社員に登用された職場のアルバイトの女性で、貢の一歳上。現在、妊娠五ヶ月らしい。  四月に我が家で両家顔合わせをした時に初めて、悠さんが奥さま――(しおり)さんを紹介してくれた。ひとりっ子だったわたしに、一度に義理の兄と姉ができたのだ。  ぜひとも幸せになって、元気なお子さんを産んでもらいたいなと思う。そして次はわたしたちの番かな……なんて。 「――そういえば絢乃さんはご存じでした? お義父さまが生前、僕にあなたのことを託されていたのを。あれは多分、こういうことだったんじゃないかって僕は思ってるんです」 「えっ? うん、何となくは……。じゃあ、わたしたちの結婚ってパパに仕組まれてたってことなの?」  衝撃の事実を今になって明かされた気がして、わたしは茫然となった。ということは、この結婚は一種の政略結婚だったってこと? 「いえ、それは違うと思います。プロポーズをしたのは僕自身の意思ですし。……でも、お義父さまが望まれていたのは確かでしょうね」  「そっか……、パパは気づいてたんだね。わたしと貢が、あの頃からすでに想い合ってたこと。だからわたしにあんな遺言を……」  父が知っていたのは、わたし側の貢への気持ちだけだと思っていた。でも、彼の方の気持ちにも父は気づいていたのだ。わたしたちの結婚は、やっぱり父にも望まれていたわけだ。この人となら、わたしは父親を失った悲しみから立ち直って幸せを掴めるはずだと。 「じゃあわたしたち、絶対に幸せにならなきゃね!」 「そうですね。これからも末永く、よろしくお願いします」  なんかお得意さまへの挨拶みたいだなと思い、わたしたちは笑い合った。 「――小川先輩、今日は前田(まえだ)さんと一緒に出席して下さってるみたいですよ」 「そうなの? あの二人、上手くいってるみたいでよかった。ずっとパパのこと引きずったまんまじゃ彼女もつらいもんね」  小川さんは、秘書として父についた頃からずっと、父に不毛な恋心を抱き続けていたらしい。ただし父と不倫関係にあったわけではなくて、彼女の一方的な片想いだったらしく、彼女はそれでも構わないと思っていたのだそう。  そんな彼女のことを、入社当時からずっと想い続けていた男性がいた。篠沢商事営業二課の前田雄斗(ゆうと)さん、彼女の同期である。  昨年夏、お二人はわたしたちのお膳立てでめでたくお付き合いを始めた。最初は友人から、ということだったらしいのだけど。  ちなみにわたしたちカップルはというと、その頃はすでに関係がギクシャクしていたのだけれど、それはさておき。
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