一生忘れない、忘れたくない夏の思い出

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「いらっしゃいませ。あ、前野さんところの梅ちゃんじゃない~。こんばんは、おつかいかしら?」 「こんばんは。そうなんです、ママが食パン買い忘れたので買いにきました」 もみじやに行くと、閉店間際のためか、売れ残っている商品が少ないためか先客が一人だけだった。なので顔なじみであるもみじやの奥さんが私に挨拶をしてくれる。 「食パンね!あと1斤だけ確かあったわ。今、用意するわね」 おばさんはそう言うとパタパタと店の奥に戻る。 「あ…おばさん、お会計お願いします…っていないじゃん」 …その声で気がついた。 「あれ、前野じゃん」 その声の主がこちらを振り向いた。私服だったから、背中を一瞬見ただけでは分からなかった。だっていつも制服姿か学校指定のジャージ姿しか見たことがなかったから。 「…こんばんは、岬君」 挨拶を返す。岬君は背がひょろっと高いので私は岬君の顔を見上げる形になる。岬君は軽く頷いた。
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